新たな絆は抑止の鎖
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かしら思い出したんか!?」
そうであればどれほど良かったか。現実は痛む胸を押さえて、思考に潜っていたのがほとんど。最後の痛みから出てきたモノも、直ぐに消えてしまった。
思い出そうとしても出て来ない。もどかしさと焦燥で頭が変になりそうだった。
じっと自分を見つめる彼女達に、彼はふるふると首を振った。
「ちょっと考え事してただけだ。思い出せたらよかったんだが……どうやらまだらしい」
やれやれ、と自分に呆れのため息を零して杯を満たし……一気に飲み干した。
酒宴の場を乱してしまうのも忍びなく感じて、落胆を隠せない素直な三人に苦笑を一つ、熱い息と共に。
「ごめんな気ぃ遣わせて。まあなんだ、辛気臭い顔してないで飲もうか。酒宴はまだ始まったばかりだ。次は楽しい話、聞かせてくれよ」
トクトクとそれぞれの杯に酒を注いでいく。
せっかくの酒宴である。親交を深める為でもあるのだからと、秋斗は場の空気を自分から切り替えた。
それから、四人は他愛ない会話とやり取りを繰り返していく。
霞と酒飲み勝負をした秋蘭が途中で春蘭を撫で繰り回したり、酔っぱらって猫化した春蘭に秋斗が引っ掻かれたり。
そうして、四人の夜は更けて行った。
寝台ですやすやと眠るのは同僚二人。霞は横目で見やってくくっと喉を鳴らした。
「全然起きひんなぁ、この二人」
「クク……そうだなぁ」
華琳から与えられた酒に加えて、四人が個人的に引っ張り出してきたモノを十数本も開けている。まだ潰れていない方がおかしいと言えるのだが、霞はピンピンしていた。
対して、薄目を開けて、如何にも眠そうな様子の秋斗が言葉を紡ぐ。
――ま、ウチ相手には……よう持った方か。
二人が潰れてから既に数刻。自分に今まで着いて来た秋斗を胸の内で褒めて、霞は自身の杯を満たしていく。
「あんたもそろそろ寝に行きや。片付けはしといたるさかい」
「張遼は強いなぁ」
「まだまだ行けるでぇ? ウチ潰したかったら樽でも持ってきぃや」
そりゃ恐ろしい、と苦笑を一つしてゆっくりと立ち上がった……が、
「あー、言いたかった事が一つあるんだぁ」
のんびりと、秋斗はまた腰を下ろした。
グビ、と酒を飲みながら目をやると、秋斗の目は優しく綻んだ。
「お前さんと再会してから、ゆえゆえは何処か……楽になった、みたいだし笑顔も増えた。ありがと、なぁ」
眠いのか目を瞑ったまま、にへら、と笑う彼。霞が苦しげに眉根を寄せたのは、そのせいで見えていなかった。
どっこいせ、とおっさんくさい掛け声を一つ。秋斗は立ち上がり、ふらふらと扉へと歩いていく。
「なぁ、徐晃……」
声を背に受けて、ピタリと脚が止まる。取
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