新たな絆は抑止の鎖
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題は無いな」
「……お、おう」
もうそれでいいよ……とがっくり肩を落とす秋斗に、くつくつと霞と秋蘭は笑いを零した。
そのまま春蘭は難しい表情で何かを考え始めた。
じっと杯を見やり、うんうんと唸り始める。霞も、秋蘭もそれに気付いて首を捻った。
「どしたん?」
霞が聞くも無言。何処か気恥ずかしそうに秋斗と……窓の外に視線を流しただけで、春蘭は何も言わなかった。
ほほう、と声を出し、秋蘭は口の端を吊り上げた。
「姉者……此処は夜天の間では無いぞ?」
びくり、と肩を跳ねさせた。目を真ん丸にして、春蘭はわたわたと手を振り始める。
「違うっ! 私は別に……アレが羨ましいのでは……無くて、だな……」
消え入る声音。もじもじと頬を染めて、恥ずかしそうに人差し指同士をくっつける春蘭。
秋蘭は何を意味しているのか分かっていてからかっているが、霞も秋斗も分からない。
「娘娘に伝わる逸話、霞なら聞いた事があるのではないか?」
はっと驚き、霞も春蘭の悩みに気付く。
娘娘に通っていれば、必ず耳に入る話である。
乱世の始まりに、名が知れ渡る三人が夜天に何を願ったのか。心絆された友が願いあった……今はもう、叶わなくなった願い。
詰まる所、そういったやり取りに春蘭は憧れていたのだ。仕えないので出来ない、記憶が無いので出来ないの無い無いづくしで不満が出て、どうすればいいか悩んでいただけである。
なんだそんなことか、と霞が微笑ましげに言葉を紡いでいる横で……グッと、秋斗は拳を握っていた。
――夜天の……願い、か
ズキ、と胸が痛んだ。
店長から話を聞いた時には無かったのに、この緩い空気の中で、ソレを知らない者達から聞いている事で……あの子の泣き顔を思い出した時のように、胸が痛む。
思い出せ! と頭に響かせた。されども何も、記憶に変化は無い。なんら欠片さえ手に入らない。
ズキリ、と次は頭が痛んだ。まるで思い出すのを拒むかのよう。否、思い出すなと、そう告げるように。
無意識の内に手を胸に当てている事には気付かず、何か思い出すやもしれないと、店長から聞いた情報をゆっくり反芻していた。
友だったと言う三人とはどれだけ仲が良かったのか。白馬の片腕とはどれだけくだらない言い争いを楽しげにしていたのか。人となり、口調、関係性……全てを情報としてしか、秋斗は知らない。
何処か他人事のような感覚。それでも聞いているだけで楽しかったのだろうと理解出来ていた。
そしてそれを、自ら切り捨てた事も……分かっていた。
もう一度、ズキと胸が痛んだ。
一言だけ、誰かが呟いた気がした。――を救い出せた……と、歓喜を乗せた細い声が。
「――――徐晃? どうした?」
「まさか、なん
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