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無欠の刃
アカデミー編
監視
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 ナルトにべったりな状態のくせによく言えると呆れながらも、不貞腐れたカトナの視線に倣うようにナルトを見る。
 体術クラスでも特に問題らしい問題は起こしていない。それどころか、着々と友達を増やしているらしい。もちろん”九尾の弟”といって詰られたり、罵られて、関わることを拒む人間は一定数いるし、友達になれない人間も少なくはない。
 けれど、どんなに罵倒されても諦めず、必死に食らいついていく姿に、どんどんと人が集まっていっているようだ。

 「…よかった」

 声を絞り出して、カトナは俯いた。
 ナルトに友達ができてよかった、ナルトが人に好かれて良かった。
 それは本当に心の底から思い、願った感情なのに、同時に、早く自分が離れなければいけないのに、という焦燥が全身を走る。
 ナルトの友達を、自分という人間の所為で離してはいけない。今のうちに、兄弟の縁を切らなければいけない。カトナは、ナルトから離れなければいけない。
 そう思うけれど、カトナの体はそれを考えるたびに重くなる。
 それは別に、ナルトに望まれたから答えたのでもなんでもなく、カトナ自身がナルトから離れたくないだけで、ナルトに、心の底から依存しているだけで。


 「ずるい、ね」


 多分、世界で一番卑怯だ。
 そう自分を罵りながらも、カトナは横にいるサスケを見る。

 「そうだな」

 何を指し示すか分からないのに、主語も一切ないのに、ただうなずいて、サスケはナルトを見つめた。
 それは全く卑怯ではないのだと言ったとして、お前はずるくないのだと否定しても、結局、カトナに何の影響も出来ないことを知って、サスケは知っている。
 カトナにとっての世界が、ナルトで構成されているのは、もうどうやっても変えられないもので。悲しいことに、カトナはナルトを守ることでしか、その世界を守る方法を知らなくて。
 家族を知っているサスケは、帰る場所を、お帰りと言ってくれる場所を知っている。
 今はもうその場所はないけれど、別の場所がある。
 イタチという兄が言ってくれる場所が、カトナ達が言ってくれる場所がある。

 対して、カトナは知らない。
 「おかえり」と言ってくれる場所を知らない。カトナは「お帰り」と言える場所しか知らない。
 ナルトにとっての「両親の代わり」というのが、カトナが自身に課している役目だ。
 サスケはよくは知らないが、カトナは自分の父親と母親に誇りを持っていて、二人の最後の言葉を叶えようとしている。
 その最後の言葉が一体なんなのかは知らないけれど、それは間違いなく、カトナを縛る鎖になっている。
 ナルトに「おかえり」と言うのが自分の役目なのだからと、二人にそう頼まれたのだと、カトナはナルトに「おかえり」を言わせたことはない。

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