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万華鏡
第八十二話 近付く卒業その十五

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「幸せよね」
「そうそう、部活じゃなくて遊びでもいいけれど」
「どっちにしてもね」
「両方共充実してたらね」
「最高よね」
「ついでに言えば」
 今度はだ、こうも言った琴乃だった。
「阪神が強かったらさらにいいわね」
「おっと、そこで野球ね」
「野球の話になるのね」
「何となく思ったのよ」
 ふと、という感じでというのだ。
「去年優勝出来たから」
「今年も、よね」
「優勝して欲しいっていうのね」
「これまで阪神連覇したことはないけれど」
 その長い歴史の中でそれはない、二リーグ制になってから阪神は連覇したことは一度もないのだ。それどころかだ。
「優勝した後はね」
「何かいつもしっくりこないのよね」
「今一つね」
「そうなのよね、いつもね」
 優勝した後のシーズンはだ。
「翌年の阪神ときたら」
「本当にね」
「けれど今年こそは」
「優勝よね」
「連覇よね」
「巨人は最下位でシーズンオフもお家騒動だったけれど」
 このチームは常にフロントが揉めごとを起こす、巨人のお家騒動の多さは阪神のそれと比べても質量共に劣らない。
「今年もね」
「まあ巨人はね」
「ずっと最下位でいいわね」
「巨人が負けると御飯美味しいし」
「お酒もいいのよね」
「巨人が負けると」
 それだけで酒の味がよくなる、巨人の敗北は最高の肴だ。 
 だからだ、この少女達も言うのだ。
「だから今年もね」
「巨人は最下位、阪神は優勝ね」
「そうあって欲しいわね」
「是非共ね」
「そうしないと」
 こう陽気に話してだ、そしてだった。
 琴乃達はテストが終わったことを喜んでいた、そうした話をしてだった。
 卒業式と終業式に向かおうとしていた、その中でのことだった。
 部活でもだった、部長が皆に言っていた。
「いい、今日からね」
「今日からですね」
「部活が」
「そう、合同練習になるから」
 そうなるというのだ。
「全部の学科の軽音楽部が一緒になってね」
「それで、ですね」
「合同練習ですね」
「それやるんですね」
「そうよ、賑やかになるからね」
 部長はにこりと笑って部員達に話した。
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