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曇りの日に
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4.コンビニの中に入って傘を買う。
「そうだね」
 彼はやっと結論を出してきた。そして美輪に対して言う。
「ちょっと待ってて。買って来るから」
「コンビニの外も人一杯ね」
 美輪はまだ不機嫌な声のままであった。コンビニの外も人が一杯でどうにも雨宿りもできそうになかったからだ。
「待たないからね」
「わかってるよ。けれど行って来るね」
「ええ」
 こうして彼は美輪を待たせてコンビニの中へ入った。だがやはり人は一杯でカウンターの列も外から見た通りであった。これはかなり待つことが予想された。
 ビニール傘を二つ手に取ってカウンターに向かう。列はさらに伸びていた。
「何でコンビニでこんなに列になるんだ?」
 その方がかえって不思議であった。カウンターは二つある筈が何と一方が使えなくなっている。そのうえカウンターにいる店員の手際が異様なまでに悪い。列になっているのはそのせいであった。
「これは」
 顔を苦くしているところでまた美輪の顔が思い浮かぶ。だがそれでもカウンターの列は減らない。そうこうしているうちに美輪が行ってしまわないかと不安になる。だがもうここまで来たら並ぶしかなかった。
「ええと」
 店員は若い兄ちゃんであった。やけにあたふたとして動きの全ての段取りが悪い。それで時間を悪戯に浪費してしまっているのだ。
 やっと強の順番になった。だがそれでも兄ちゃんの手際は悪い。おつりを数えるのでさえも見ている方がイライラする程に時間がかかっている。
「これでいいですよね」
「はい」
 強がおつりの額を見て答える。小銭がなく千円を出したのが運の尽きだった。そう思うしかなかった。
 何はともあれ傘を買った。そして美輪が待っている場所に行くと。
「え・・・・・・」
 もうそこには誰もいなかった。怒って帰ってしまったらしい。
「何てこった」
 強は誰もいなくなったその場所を見てついつい言った。言ったところでどうしようもないのだが。
「参ったなあ」
 これからのことが大変だと思った。美輪は一旦怒ると後が大変だ。この事態をどうしようかと思ってもどうにも解決策が思いつかない程であった。
 強は雨の中一人溜息をついた。こんなことなら最初から傘を持って来ればいいと思ったがそれももう後の祭りである。雨に濡れるのをそのままにがっくりと肩を落としていた。


曇りの日に   完


                  2006・12・25

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