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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
26.闇の侵蝕者たち
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いし、その形跡もない。
武器を持っているようにも見えない。さらに擬似空間の断層だとするならこんな連続的に展開できるわけない。
「おい、舞威媛」
不意に少年に呼ばれてハッとする。
なぜ、この少年はここまでこちらの素性を知っているのだろう。
「なによ!」
紗矢華は少し機嫌の悪そうに返した。
紗矢華は男が嫌いだ。唯一、暁古城と緒河彩斗はまだ大丈夫なのだ。
「俺だけに戦わせる気かよ」
「あなたが勝手に戦ってるだけでしょ!」
強気には出たが紗矢華にこの状況を打開する手などない。
「しゃあねぇな。一瞬だけチャンスを作ってやるよ」
少年は面倒くさそうに右手で頭を掻いて正面を向いた。
「鬱陶しい──!」
シュトラ・Dは切れたように背中に突如として、新たな腕が出現する。生身ではなく、念動力によって生み出された幻影の腕だ。しかしその幻腕からも、不可視の斬撃が放たれる。
「その力、まさか……天部!?」
シュトラ・Dの今の姿を見て、紗矢華は彼の正体にようやく気づいた。
天部──それは絶滅したはずの亞神の末裔。有史以前に高度な文明を築いていたという、古代人類の生き残りだった。
「正解だぜ、バカ野郎!」
六本の腕を駆使したシュトラ・Dの猛攻が不可視の壁を破壊し出した。
「ちょっとどうするのよ!?」
紗矢華は声を荒げる。
「テメェの見せ場を作ってやるんだ。文句言わずにテメェは一撃でも込めてればいんだよ!」
少年は逆ギレをしたように紗矢華に声を上げる。
冷静に考えれば紗矢華の方が無茶を言っているのだ。
スカートの下に隠された鳴り鏑矢を使えば、シュトラ・Dの念動力の防御も確実に突破できる。
だが、この距離では魔弾は使えない。なによりもシュトラ・Dが、矢をつがえる時間を与えてくれるわけがないかった。
「ぶっ潰れろ! 行け、轟嵐砕斧──!」
シュトラ・Dが、六本の腕を同時に頭上へと掲げた。そして一気に振り下ろす。かつてないほどの巨大な暴風が巻き起こり、今まで紗矢華たちを覆っていた不可視の壁が砕けた。
「ぐっ……」
苦痛を浮かべる紗矢華だった。
それに対して少年は至って平然だった。むしろやっとか破ったか、と言わんばかりの表情をしている。
「これでテメェの防御は終わりだなァ、この野郎!」
「……ああ、テメェも終わりだがな」
少年は悪意に満ちた愉しげな微笑みを浮かべる。
その瞬間、漆黒のオーラが少年の周りを包みこんだ。そのオーラの正体は爆発的なまでに大気に放出される魔力だ。感覚として暁古城と緒河彩斗の魔力と同等の魔力量に感じられた。
だが、紗矢華は出現した者の光景に言葉を失った。
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