暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
観測者たちの宴篇
26.闇の侵蝕者たち
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 それでは一体誰があの攻撃を防いだのだろうか。

「……天部がこの程度かよ」

 少年の口元がわずかに上がった。
 まさか彼が一撃で止めたというのだろうか。
 “雪霞狼”でも止められず、“夢幻龍”も彩斗の眷獣の力でようやく完全無力化ができた不可視の斬撃を防いだ。

「あァん? ……言ってくれるじゃねぇかこの野郎!」

 シュトラ・Dの顔が凶悪に歪む。自分の攻撃が意図も簡単に止められて頭に血が上ったようだ。

「行けよ、獅子王機関。こいつは俺が止めてやつよ」

 そう言って少年は、愉しそうに脱獄囚を睨みつける。
 その雰囲気はヴァトラーに酷似していた。

「私も残るわ。雪菜と友妃は暁古城たちをお願い」

 そう言って紗矢華もその場に残ること宣言する。
 彼女の背中を友妃は一瞬だけ見て、小さくうなずいて走り出した。




 暁深森は、見慣れた宿泊施設でくつろいでいた。
 マグナ・アタラクシア・リサーチ──MARは魔術的な回路が組みこまれた機械と、式神によって警備されている。
 それは優秀な攻魔師や魔女ならば、彼らを容易くあざむけるのも事実だ。
 たとえそれが“守護者”を失い、瀕死の重傷を一時的に負った魔女であっても、だ。

「あらあら……」

 解錠され、半開きになった医務室の扉を見て、深森は苦笑した。
 医務室の中に、患者の姿はなかった。
 ベッドの上には、無理やり引き抜かれた点滴のチューブと、電極。そして引き剥がされた呪符が散らばっている。床には真新しい血痕が、ぽつぽつと散っていた。

「ユウちゃんったら……」

 深森は、白衣のポケットから形遅れの携帯電話を取り出し、警備部門の番号を呼び出す。
 手負いの患者を連れ戻すなど容易いことだ。

「あら……?」

 しかし電話はつながる直前に、不吉な音が響いて、研究所の照明がちらついた。
 小規模の地震に似ているが、人工島である“魔族特区”ではありえない。電話回線はダウンして、携帯電話の接続が切れる。警備用の式神たちも動きも止めている。絃神島を支えている魔術に障害が発生している。

「……闇誓書……なるほど、そういうことなのね、ユウちゃん……」

『少しまずいことになってるわね』

 回線が切れたはずの携帯から女性の声が聞こえてくる。

「まさかあなたまで出てくるとは、思わなかったは……“電脳の姫”さん」

『この歳で姫って呼ぶのはやめてほしいわね』

 携帯から機嫌を損ねた女性の声が聞こえる。

『とりあえず、闇誓書は私たちの息子たちになんとかしてもらいましょうかね』

「それもそうね」

 深森は大地を襲う人工的な衝撃に身体に感じながら天を見たのだった。




 
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