志乃「手をどかして」
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タログを俺に見せてきた。いくつか箇所にチェックされているので、恐らく前もって読んでいたのだろう。
俺は折れているページの部分を見てみる。と、そこには何やら大きそうな機械やらマイクやらヘッドフォンやらが一ヵ所に詰め込まれており、目次で確かめてみると、これは機材の全てを揃えたスターターセットだという事が分かった。
ちなみに値段は……二八〇〇〇円。破格すぎるぞ、これは。志乃が言ってた値段より高いじゃんかよ。
「兄貴、バイトすれば?」
志乃は俺の心を読むように、パソコンを弄りながらそんな事を言ってくる。だが、その意見にはけっこう説得力があった。
なるほど、バイトか。これまで部活とか部活とか部活とかでやった事無かったな。でも、健一郎の奴は野球しながらバイトもしてるんだよな。確かコンビニのバイトだっけ。
「ううん、でも俺計算苦手なんだよな」
「あとコミュ力もね」
「少なからずお前よりは他人と接する機会は多いぞ」
「兄貴、私に喧嘩売ってるの?」
うお、自分から突っ込んできたくせに怒ってる。なんてめんどくせぇ奴だ。でもバイトするという手も考えておこうかな。
再びカタログのチェックしてあるページを見ていると、スターターセットの他に単品での説明やオプションの説明も載っていた。ふむ、俺が見たサイトの内容と全然違うぞ。
「名前覚えるのは後でいいから、とりあえずそれぞれの機材が何のためのものかを覚えて」
志乃は依然としてパソコンから目を離さないが、俺にそう呟く。それもそうだな。よし、頑張って読んでみよう。
単品で紹介されているページを読んでみると、最初はただただ読んでいるだけという感じだったが、いつの間にか俺は次へ次へとページを捲っていた。これが不思議な話で、読み進めるうちに自然と頭の中で機材を使っている構図が浮かんでくるのだ。そして、さらに確実な絵図を求めるように俺の手が先へ先へと促すのだ。
知識を知識で覆い被せているような、奇妙な感覚が手の先から脳髄に伝わり、俺の好奇心を活性化させる。
一通り説明を読み、頭を上げると、志乃がこちらを見つめていた。何事かと聞く前に、志乃はぼそりと呟く。
「随分読み耽ってたね」
「え?」
それがどういう意味かよく分からなかったが、志乃が時計を見せてきて、やっと意味が分かった。どうやらカタログを夢中に読み過ぎていたようだ。
「ごめん、もしかしてずっと待ってた?」
「まぁね。別に構わないけど」
そう言って志乃はパソコンの画面に目を移し、マウスを器用に使ってみせる。そして、俺に目で合図してきたので、横からパソコンの画面を覗く。
そこには、先程スターターセットという欄で見た赤い
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