第八十二話 近付く卒業その十
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「二年だよな」
「留年って」
「いや、ひょっとしたらって思わない?」
里香のその大きな目を見てだ、美優は問うた。
「そうな」
「ううん、ちらって思うけれど」
「里香ちゃんだってそうだよな」
「美優ちゃんは絶対に大丈夫でしょ」
「いや、そこはわからないぜ」
美優は笑って言った、自分のことも含めて。
「本当にひょっとしたらさ」
「留年なのね」
「それに引っ掛からないと皆な」
「二年生ね、来年は」
「何かね、この学校ってね」
ここで言ってきたのは景子だった。
「滅多に留年しないそうよ」
「滅多にか」
「そうなの」
「というか高校でも留年なんてね」
景子は二人だけでなく琴乃と彩夏にも話した、四人共教科書とノートを開きペンを持ったまま彼女の話を聞いていた。
「滅多にないでしょ」
「そうそういないわね、確かに」
琴乃もこう返した。
「私も知ってる限りでも」
「いないでしょ」
「ええ、誰もね」
「私もね、天理教の教会の人よく天理高校行くけれど」
「あっ、奈良県の」
野球やラグビー、柔道、吹奏楽で有名な学校である。全国から生徒が集まることがこの学校の特徴である。
「あそこの」
「そう、あそこでもね」
「滅多にないのね」
「何か教校付属高校っていう姉妹校もあるけれど」
「そっちの学校でもなのね」
「そうそう滅多なことでね」
留年はしないというのだ。
「学校側も追試受けてもらって意地でも進級してもらうそうよ」
「何か留年されると迷惑みたいね」
「実際学校側もそうみたいだから、それでね」
「高校で留年はなのね」
「滅多にないから」
そうだというのだ。
「大学でも普通にしてたら四年だから」
「四年で卒業ね」
「七年も八年もいる人もいるけれど」
「あくまで例外ね」
「そうそういないから」
だからだ、高校でもだというのだ。
「高校は三年よ」
「普通にしてたらよね」
「相当悪い成績でもね」
クラスの中でワースト五に入ろうともだ、最下位はともかく。
「進級はするから」
「相当悪くてもなの」
「だから皆ね」
景子も含めて、という意味の言葉だ。
「大丈夫よ」
「そうなのね」
「そう、だから今回のテストも」
「普通の点取ったら」
「卒業出来るから」
そうだというのだ。
「安心してね」
「うん、じゃあね」
こう話してだ、景子は四人にあらためて言った。
「勉強頑張ろうね」
「それじゃあね」
「いい点取ろうね」
こう話してだ、そのうえで。
五人はテスト勉強をした、こちらも頑張らないとならなかった。それは彩夏の家でもだった。五人で勉強をしていると。
彩夏の母が何かを持って来た、それはというと。
「お粥?」
「お粥なんですか」
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