第四章
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第四章
「いいから。起きてよ」
「起きてって言われても」
彼の呑気な声はそのまま続く。
「夜なのに」
「いいから」
とにかく強引にそういうことにする真魚だった。どんな事態でも強引なことは変わらないようである。
「起きて。早く」
「ううん、起きないと駄目なの」
「そうよ」
そしてこのことをまた彼に告げた。
「だからね」
「わかったよ。それじゃあ」
目を開ける。するとそこにいたのは。
「えっ・・・・・・」
「あれ、河合さん?」
「そうよ、私よ」
彼女は既にベッドの中に入っている。彼の横に寝ての言葉だ。
「私よ」
「何でここに?」
「決まってるでしょ。どうしてここにいるかなんて」
流石に今は頬を赤らめさせそのうえで彼に告げてきていた。
「もうそれは」
「まさかこれって」
「そうよ、夜這いとでも何とでも言って」
今度は居直ってきた。もうここまで来たら引くわけにはいかない。だからだ。
「もうね。何とでも」
「どうしてここに?」
しかしここでも。仙一の言葉はぼけたものであった。やはり天然であった。
「何でなの?」
「だから。告白に来たのよ」
最早一直線だった。止まることも外れることもない。
「告白にね。だから来たのよ」
「わざわざ僕の家にまで来るなんて」
「もうはっきり言うわよ。いいわね」
その一直線の勢いのまま続けるのだった。
「好きだから」
「僕のことが?」
「そうよ。何回も言って気付いてもらえなかったけれど」
実際に真魚は彼にこの言葉は何度も言っている。しかし彼は全く気付くことがなかった。だから百回も玉砕しているのだ。そういうことだった。
「それでもね。また言うわ」
「僕が好きなんだ」
「何度でも言うわよ」
勢いは止まらない。
「好きよ。仙一君のことが大好きよ」
また言った。
「いいわね。付き合って」
腹を括った。この言葉を出す時は流石に。何度も言っているがそれでも腹を括るものだった。そうしないと決して言えない言葉だから。
「私と。いいわね」
「うん。じゃあ」
そして仙一は戸惑いながらも頷くのだった。
「わかったよ。それじゃあ」
「本当ね?」
「本当だよ」
おっとりとした声のままだったがそれでも嘘ではなかった。
「僕嘘言うのは嫌いだから」
「わかったわ。よかった」
ここまで聞いてほっと安堵の息を漏らすのだった。
「やっと。受けてもらえたわ」
「だってさ。僕だって気付いたから」
こう真魚に述べる仙一だった。
「こうして部屋にまで来てくれたら」
「そうよね。わかってくれるわよね」
「うん」
「よかった。来たかいがあったわ」
彼の母親に手引きされてここに来たことは言わない。流石にそれは内緒だった
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