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美味しいオムライス
第七章
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第七章

「実はね」
「どうして?」
「いい人よね」
 さっきの亜紀の言葉を繰り返す。
「確かに言ったわよね、今」
「ええ、言ったわ」
 ここでもそれを正直に認める。
「だから。それなのよ」
「それなの」
「そう、それ」
 言葉が繰り返される感じになった。彼女はまるでその言葉を亜紀の言葉に刻み込むようだった。
「それなのよ」
「いい人って」
「嫌いな人と一緒に食事に行く?」
「いいえ」
 少なくとも亜紀はそうではない。嫌いな相手とは話もしないし付き合うこともない。そうした結構極端なところが彼女にはあるのだ。
「それはないわ」
「そうよね。亜紀は特にね」
 そして彼女もそれがわかっていたりする。
「それは知ってるから」
「知ってるのなら言うまでもないじゃない」
「それが違うのよ」
「違うって」
「だからね」
 言葉が少し慎重になっていた。まるで亜紀に言い聞かせるように。
「好きな人と一緒に行くものよね」
「ええ」
 何が何だか半分以上わからないまま彼女の言葉に頷く亜紀だった。
「そうよ」
「そうだったら。答えは出てるじゃない」
「答え!?」
「だから」
 鏡から亜紀を見る。その瞬間に彼女の化粧は終わった。その整ったメイクを見てまずは満足げに笑う。メイクの出来に満足しているのだ。青いアイシャドーが印象的だ。
「好きなのよ、泉水さんが」
「私が」
「そういうこと。性格は凄くいい人なのよね」
「そうよ。間違いなくね」
 これははっきりとわかっていた。どう見ても泉水は悪い人間ではない。それがわかっているからこそ今までも一緒に食事をしてきたのだ。しかし。気付いていないことがあったのだ。
「あんた、泉水さんのことが好きなのよ」
「まさか」
「そのまさかよ」
 そこをまた指摘してみせる。
「好きだから。一緒にね」
「食事に行くのね」
「わかったかしら」
 あらためて亜紀に問う。
「そこんところ」
「まさかとは思うけれど」
「別に認めてもいいじゃない」
 今度は亜紀の背中を後ろから押した。
「悪い相手じゃないんでしょ」
「それはそうだけれど」
「それに」
 今度は意地の悪い押しにしてみる彼女だった。
「あんたもう二十八よ」
「二十八」
「そろそろ決めたら?」
「決めたらって」
「だから。とりあえず今のままを続けてみたらどうなの?」
 優しい言葉に変える。言葉の手綱を慎重に選んでいる。
「今のままを?」
「そういうこと」
 それをまた言う。
「どうかしら、それで」
「そうね」
 亜紀もまたメイクを完全に整えていた。それを鏡でチェックしている。
「じゃあ暫く」
「それがいいわよ。それじゃあ」
「仕事ね」
「そういうこと。仕事は待ってはくれ
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