第十二章 妖精達の休日
第四話 見よ! あれが浴場の灯だ!
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いい。
だが、それでも漢達はやる。
限界まで目を見開き、力んだ身体を汗で濡らしながら、しかし諦める事なく壁に張り付き“錬金”を唱え続ける。
額に浮かんだ血管は微かに震え、何時か切れて倒れてしまうのではないかと心配になる程だ。
しかし、何故彼らはここまでするのか?
セイバーの鼻を明かすためか?
これまでの鬱憤を晴らすためか?
否―――否である。
彼らがここまでする理由―――それは―――。
「胸ぇ〜〜〜〜ッ!」
「尻ぃ〜〜〜っ!」
「足ぃ〜〜〜〜っ!」
そう、エロスである。
肉欲である。
復讐や鬱憤を晴らすためではなく、ただ石壁の向こうに広がる桃源郷を求めているだけであった。それぞれが求める果実の名を叫び、彼らは一心不乱に穴を開ける。
そして、遂に―――。
「―――あ、ああ……ああ―――ッ!?」
「っく、ふふ、そうだ、アレが我々が待ちに望んだ浴場の光だ……」
微かに空いた穴から漏れた明かりを目にし、感動に打ち震える男の後ろで、マリコルヌが両手を広げ宣言する。
「私は諸君らを約束通り連れて帰ったぞ…? あの懐かしの浴場へ……あの懐かしの浴場へ!」
「浴場だ! 浴場の灯だ!」
一つ穴が貫通すると、次々に浴場へと繋がる穴が開きだす。穴から漏れる光を見て歓喜に打ち震える声を上げた男たちは、一斉に背後を振り返り自分たちの指揮官を仰ぎ見る。
指示を待つ。
彼らの指揮官の命令を待つ。
誰かの喉が蠢き喉がなる。
それが合図だったかのように、マリコルヌは大きく頷き口を開いた。
「穴は遂に石壁を貫通し、夢へと続く……! 小隊各員へ伝達! 隊長命令であるッ!」
期待に満ちた眼差しを向けてくる変態たちへ男臭い笑みを向けたマリコルヌは、ゆっくりと暗い歪んだ笑みを浮かべた。
「さあ、諸君……覗きを始めよう」
マリコルヌの言葉が言い切られる寸前に、彼らは一斉に振り返り自分たちが開けた穴に顔を、目を押し付ける。顔面が石壁にめり込むんじゃないかと心配になるほどの強さで顔を穴に押し付けていた彼らの目が、暗闇に慣れていた視界がゆっくりと明るさに適応されていく。ぼんやりと見えていた視界が段々とクリアになっていき、彼らの目に女風呂の全景が映り込む。
「「「「お、おお、おおおおおお―――!!!」」」」
漢達の口から歓声とも感嘆ともとれる声が漏れ―――。
「「「「おおおおお―――おう?」」」」
戸惑いへと変わった。
「え? ウソ?」
ポツリと一人の男の口から呆けたような声が零れおちた。
彼らの目。
その視界には―――。
「まさか、とは思ってはいましたが、本当に来るとは……本当に情けない。覚悟はよろしいですか
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