第十二章 妖精達の休日
第四話 見よ! あれが浴場の灯だ!
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魔法の明かりを天使の輪のように頭上に浮かべながら、一人の小太りの男、いや少年がにこやかに笑いながら前に並ぶ男達に語りかける。
「諸君……わたしは女性が好きだ」
少年は何度も何度も繰り返す。
「諸君、わたしは女性が好きだ」
確かめるように、訴えかけるように、同意するように、勧めるように―――大きく頷き、笑いながら……。
「偉大なる山脈の如く大きな胸が好きだ」
胸の前に置いた両手を大きく山なりに動かし。
「滑らかな大理石のごとく小さな胸が好きだ」
胸の上に置いた両手を一気に下へ滑らせながら。
「チョコレートのような浅黒い肌が好きだ。クリームのように白い肌が好きだ。長いカモシカのような足が好きだ。夜の闇のように黒い髪が好きだ。燃える炎のような赤い髪が好きだ。涼やかな水のような青い髪が好きだ。黄金のような金の髪が好きだ」
連続して息着く間もなく言葉を発し続けていた少年は、不意にピタリと口を閉じると周りを見渡した。誰もが口を閉じ、食い入るように自分を見ているのを確認すると、少年は大きく頷き続きを語り始める。
「王城で、街で、山村で、漁村で、屋敷で、学院で……」
少年は目を閉じて語る。その瞼の裏には、一体どれだけの少女たちの姿が映っているのか……。
「この地上に存在する。ありとあらゆる女性が大好きだ!」
目を見開き両腕を大きく開き叫ぶ少年。
「少女の白く細やかな指がわたしの服を掴み、上目遣いでおねだりされるのが好きだ」
歓喜の声を上げ、笑う少年。
「部屋で二人っきり、ほろ酔い気分で頬を染める少女を見た時など心がおどる」
観衆たちが同意するように低く唸り声を上げる。
「授業中居眠りをしてしまった少女が、目が覚めて慌てて真っ赤に染まった顔で周りを見渡す姿が好きだ」
フッ、とその光景を浮かべたのだろう漢達の笑い声が上がる。
「視線が合い、怒ったような、照れたような、恥ずかしそうな目で睨み付けられ、小さくメッと言われた時など胸がすくような気持ちだった」
ほぅ、と気の抜けたような声が漢達の間で漏れた。
「匂い立つ花々のように着飾った乙女たちが、舞踏会で舞い踊る姿を見るのが好きだ」
観衆の前に立つ少年が、両手を広げ天幕の天上を見上げ。あたかもそこに光々と輝くステンドグラスがあるかのように目を細めた。
「初めての舞踏会に緊張に身体を固くした少女が、手に汗を握り、ステップを何度も間違え羞恥に顔を赤く染める姿など感動すら覚える」
想像した少女の姿に漢達から感嘆の声が漏れたのか、天幕の中に低いどよめきのような声が響く。
「舞踏会の勝手が分からず、所在無さげに壁の花とかした少女たちに声を掛けた際の、戸
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