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SAO〜刹那の幻影〜
第五話
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りと笑みを浮かべた。
 瞬間、人型のバケモノが、赤い(まなこ)の線を引き、こちらに向かって突進を開始した。その手には、こちらも同じく赤に輝く手斧。
 《ソードスキル》、名前は知らないが、恐らくかなり強力なものだ。技を繰り出す予備動作(プレモーション)の長さと、斧に纏わるスキルエフェクトの濃い色合いから、それがわかる。
 斧自体の速度も今までより格段に速く、先ほどのようなステップによる『回避』はシーラでも不可能だ。そう、『回避』は。
 一瞬の考察。敵が、開けた距離をおよそ半分ほどまで埋め戻した時、突然、下段に構えられていたシーラの片手剣に光が走った。と思う間もなく、その光剣が跳ね上がり、今まさに自分の身へ振り下ろされたコボルトのソードスキルと諸突した。
 飛び散る火花。
 一瞬遅れてソードスキルのサウンドエフェクトと、耳障りな金属音が鳴り響き、互いの武器が弾かれた。反動で双方の体がのけぞり、わずかに吹き飛ばされる。
 その無理な体勢で、しかもソードスキルを使用した際に必ず発生する攻撃後硬直(ディレイ)により動くことができなくなったシーラが、瞬間、同じく硬直したコボルトに歓喜の眼光を睨めつけ、叫んだ。

「スイッチ!」

 それとほぼ同時に、俺は手の中の短剣をきつく握り、今習得している中で最も強力なスキルを発動した。
 短剣スキル三連撃技《メーブショット》
 たっぷりの予備動作(プレモーション)時間を使って繰り出された俺の攻撃は、カカシと化したバケモノの弱点、喉元をきれいに三度切り裂き、残り四割ほどもあったエイチピーバーを、かけらも残さず吹き飛ばした。
 これが弾き(パリィ)防御と位置交代(スイッチ)
 敵のソードスキルを、一人が同じくソードスキルで弾き、『防御』。そこに生まれる空白の時間(ブレイク・ポイント)を利用し、もう一人が、硬直を強いられ、無防備に体をさらけ出す敵へと攻撃を行う。
 聞けばなかなかの高等テクニックであるらしいのだが、俺とシーラの相性が良かったのか、はたまた俺に合わせるシーラの実力がすさまじいのか、習得にそう時間はかからなかった。



 聞きなれたガラスを砕く効果音の後、出現するウインドウを即座に閉じると、こちらも同じくウインドウを消去したシーラが、俺の方を見るなり、呆れ顔でため息をついた。

「……ユウ、いい加減戦闘のスイッチ切りなよ。さっきのも、手出さなきゃ戦わずに済んだし……うん、一回肩の力抜いてみようよ。ほら、りらーっくす」

 聞き分けのない子供でもなだめているような、どこか抜けた声色で、シーラが俺の両肩に手をやり、深呼吸してみせた。
 一瞬、いつかにテレビで見た胡散臭い通販番組を思い出す。そのせいで余計に増した不快感に喉を鳴らすと、俺はシーラの、右肩を押さえる魔手に、両
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