第六章
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問うのだった。
「最近。付き合い悪いってわけじゃないけれど」
「ちょっとね」
口紅を塗る手をまずは止めて答えた。
「色々と行くところがあって」
「色々?ああ」
彼女はここで勘を働かせて言った。
「あの人?」
「そう、泉水さんと」
そのことを正直に答える。それを隠すつもりはなかったしやましいこともなかった。だから普通に答えることができたのだ。彼女にとっては。
「一緒に行ってるの」
「それはまた」
「それはまたって?」
唇はもう塗り終えて今度はアイシャドーにかかっていた。
「何かあるの?」
「好きになったの?」
彼女も彼女でまた随分と単刀直入に言ってきた。
「ひょっとして」
「それは」
「それはって?」
「別にそんなつもりはないけれど」
「冗談ポイよ」
彼女はまた随分と古い表現を亜紀に対して使った。彼女もアイシャドーを塗りながら笑って言うのだった。
「そんなわけないじゃない」
「そんなわけないって」
「あのね。食事よ」
「ええ、食事ね」
亜紀は彼女の言葉を繰り返す。やはりあまりわかってはいない。
「食事だけれど」
「たかが食事されど食事よ」
今度の亜紀への言葉はこうであった。
「わかってるの?」
「わかってるのって言われても」
また化粧をする手を止めて首を傾げる。
「そんなこと言われても」
「わからないってこと?」
「いい人だとは思うわ」
この言葉が決め手になった。本人は何気なく出した言葉だったが。
「それはね。優しいし丁寧だし」
「何だ、じゃあやっぱり好きじゃない」
「何でそうなるのよ」
思わず彼女に対して批判する目を向けた。鏡で彼女に対して視線を向けるのだった。
「全然違うじゃない」
「違わないのよ、これは」
彼女はなおも亜紀に対して言う。全く平気な顔で。
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