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美味しいオムライス
第一章
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べながらまた話す。
「外面はよかったのよ」
「中身は?」
「よくなかったわ」
 外面がいいという言葉の後には必ず出て来る言葉であった。この場面での亜紀もまた同じだった。彼女はさらに友人に対して言葉を続ける。
「顔や一見とは違って」
「そんなになの」
「いいと思ったのよ。その時は」
 一応はこう話す。
「けれど。実際は」
「最悪だったと」
「最悪だったってものじゃなかったわ」
 うどんを一口入れた後で首を横に振ったうえで述べた。うどんの美味さは今は感じずに憂いの強い言葉を出すのだ。この場にはいささか不適当な感じなのは彼女もわかっていたが。
「浮気はするし嘘はつくし」
「うわ、それはまた」
「挙句にお金持ち逃げするし。今はどうしているやら」
「また随分酷い男と付き合ったのね」
「そうなのよ。だから」
 ここまで話してさらに述べるのだった。
「今までね。どうしても」
「相手を選んでいたってわけね」
「性格なのよ」
 また性格を話に出した。
「それがよくないと。まずはそれが第一なのよ」
「ふうん。顔よりもね」
「駄目かしら」
「亜紀正直言って美人だからね」
 彼女はまた随分とストレートに自分が亜紀に対して思っていることを述べた。ここではあえてそうしてみせたのである。考えたうえで。
「だからね。それはね」
「釣り合った容姿の人をってこと?」
「世の中はそう考えるのよ」
 あえて周りをこう表現したのだった。彼女は今度はつゆをすすっている。関西風の薄口醤油だった。ダシは鰹に昆布といいものを使っているのがわかってそれには満足しながらの言葉だった。
「世の中はね」
「そうなの」
「美男美女のカップル」
 またはっきりと言ってみせた。
「それっていいじゃない」
「よくそれは言われるけれど」
「だからよ。皆亜紀には期待してるのよ」
 随分とにこにことした顔での言葉だった。
「本当にね」
「別にそういうことで期待されても」
 しかしその亜紀の顔は浮かない。
「どうなのかしら」
「まあ恋をしなさい」
 煮え切らない亜紀に告げた。
「いい相手とね」
「わかったわ。ところで」
「ところで。何?」
「今度はオムライスにしない?」
 こう彼女に提案するのだった。
「オムライス!?」
「ええ、好きなのよ」
 今はうどんを食べているがもう他の食べ物の話をしていた。
「オムライスが」
「美味しいオムライスのお店知ってるの?」
「ええ。それでも」
「それでも。何?」
 亜紀に対して問う。彼女はまだうどんを食べている。

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