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絶望と人を喰らう者
第四話 二
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じめまして」
「……?」
「えっと、わたしのなまえはありすっていうの、あなたは?」
「私の名前は森下雫」
「しずくちゃん…… は、えっと、みらいっていうひととここにきたの?」
「うん、本当はティアティラに居たけど…… 間宮っていう人が何か未来にお仕事を頼んだらしい、それから逃げてる最中、そうだよね? 未来」
「すまないが記憶に無い、どうやら頭を打ってしまって記憶が無くなってしまったんだ」

 ナナシは本当の事を話せば色々面倒な事が起こりそうだと思い、すぐに無難な嘘を吐いた。
 今まで自分がずっと記憶喪失のような状態だったからある意味嘘ではないのだが。

「本当? 大丈夫?」
「あぁ、何とかな」
「それで少し雰囲気がおかしかったのか…… いいよ、ところで…… ありすちゃん? はどこで会ったのかい?」
「偶然迷子になっていたところを拾った」
「…… そうか」

 彼女はナナシの答えを聞いて、無表情で自分の長い前髪を払う。
 一瞬、何かを言いたげだったが、彼女は何も言わなかった。

「ここは少し荒れている、もし良かったらまだ破損の少ない安全な一階へ下りないか? それに、もう深夜だ。そろそろ休息を取ったほうが良い」
「そうだね」

 雫はナナシの言葉に頷き、彼らと一緒に階段を下りる。
 階段を下りながらナナシは彼女の言葉を思い出し、それを口にして呟いた。

「間宮……か……」

 一階の寝室部屋には昔夫婦で寝ていたのだろう、ダブルベッドが置かれていた。
 以前、気絶したアリスを寝かせるとき、ソファーの上だったからナナシは少し、ベッドの上にしておけば良かったっと思いつつ、彼女達を寝かせる。
 自分はリビングから椅子を持ってきて、それに座った。

「寝たかったらいつでも寝てくれ、俺は奴らが来ても大丈夫なようにずっと起きてるから」
「ナナシ、だいじょうぶなの? ねらなくてもへいきなの? むりはだめだよ……?」
「ナナシ?」
「名前が無いからナナシっという仮名をもらっている。そしてアリス、俺は大丈夫だ、安心しろ。もし確実に安全だと分かったら少し眠るから」
「そう……? ならよかった」

 アリスはそう安心した優しい声で言うと、そのまますーっと静かな寝息を立てて寝始めた。

「未来、本当に記憶が無くなったんだよね?」
「そうだ」
「それなら良かった」
「良かった?」
「うん、君はもう未来じゃなくてナナシなんだよね? なら少し聞いて欲しい事があるんだ」

 彼女はそう言うと、身体を起こして、自分の右腕をそっと彼に見せる。
 すると、雫の二の腕辺りに、小さな注射の痕があった。

「これがどうしたんだ?」
「注射痕、二日前の」

 雫はそう言うと、「ふう……」っと憂いを感じるよう
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