暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十五 尾行
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
葉に身構えようとする。だがまるで己自身が【影真似の術】を掛けられたかのように、シカマルの身体は硬直してしまっていた。
ロック・リーから離れる。動かぬシカマルの前を横切って、ナルトは病室の扉へと向かった。振り向き様にリーへのお見舞いの花を投げる。
「ナルの味方でいてあげてね。シカマル…」




空中で大きく弧を描く、一輪の白き花。
刹那、空中分解した花弁が渦を巻く。視界を花の嵐に覆われ、シカマルは反射的に目を閉じた。ナルトの全身が大量の白に埋め尽くされる。





気づけば、病室にはベッドに横たわるロック・リーとシカマルしかいなかった。人ひとりを埋めるほど舞っていた花弁など一枚すら見当たらない。ましてやナルトの姿など…。
僅かに開かれた扉の隙間から時計の音がささやかに流れ込んでくる。

チクタク・チクタク・チクタク・チクタク……―――――

呆然と立ち竦むシカマルの足下にぽつんと落ちている一輪の花。しっかりと花弁を身につけているそれは、彼の影上で白い輝きを放っていた。












木ノ葉病院からは遠く離れた岩場。刃物の如き先鋭な岩石が並ぶその場で、ナルトは病院の廊下で拾ったしおりを太陽に翳した。かわいらしい押し花に、ふっと微笑む。
それを大事そうに懐に納め、彼は手近の大岩上へ跳躍した。

太陽の光に反射し、白く聳える岩石に腰を下ろす。片膝を立てて座り込んだナルトは、真下の岩陰に向かって言葉を投げた。
「いつまでついて来るつもりだ?」
ナルトの呼び掛けに応じて、岩の背後から姿を現す。太陽に劣らぬギラギラとした眼光で彼はナルトを見上げた。

「我愛羅」


空漠の荒野にて、金と赤の髪が靡いた。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ