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渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十五 尾行
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意を決して駆け出す。そして相手が入って行った扉をガラリと開けた。
花瓶に活けられた可憐な水仙。水仙を包み込むように大きく揺れる白いカーテン。
そして、寝入るロック・リーに向かって伸ばされる、手。
それを彼は紙一重の差で止めた。

「こんなとこで何してんだ、アンタ…」










ドンドンドンと大きくノックする。
拳で勢いよく叩いていたバキは、扉が開かれた途端、己の教え子達の顔触れを見渡した。
一人足りない。それも要注意人物が。
訝しげに見てくる子どもらを押し退ける。木ノ葉の里で借りている部屋の隅々を覗いてから、彼はテマリとカンクロウに鋭い視線を投げた。
「あれほど奴から目を放すな、と言っておいただろうが!!」
一喝され、慌てて先ほどまで弟がいた部屋に向かう二人。バキの言葉通り、何時の間にかいなくなっている事実に、彼らは呆然と立ち尽くした。
うろたえる教え子達の後ろで、バキは静かに目を細める。
「何も、起きなければいいのだが……」











催眠作用を催す鎮痛剤でも服用したのか。自身の周囲で起きている出来事に気づかず、静かに寝息を立てるロック・リー。そしてリーの傍らで佇む相手の顔を彼――奈良シカマルは交互に見遣った。再度、問い掛ける。
「アンタ…。今、何しようとしたんだ?」

対象者の影を捉え、自身と同じ動きをさせる【影真似の術】。
この術が発動している際、相手は術者の動きに合わせざるを得ない。つまりは術者であるシカマルの言いなりになるといっても過言ではない。身体を動かす主導権を握られているからだ。

しかしながら、術で動きを封じられた張本人は平然としている。動揺の色さえ見えない目の前の人物に、シカマルは内心狼狽した。
(どうしてこんなに冷静でいられる?俺の影真似で身体の自由は利かねえはずなのに…っ)
シカマルの心中を知っているのかいないのか。動きを止めたまま、来訪者は口元に微笑を湛えた。

「何だと思う?」
何をしていたかという詰問に、ナルトは逆に問い返した。












「こいつを見舞いにでも来たのか?」
警戒しつつも自身を静かに検分するシカマルに、ナルトは穏やかな笑顔で応じた。
「そうだ…といったら、信じる?」
どこか含みのある物言いに、シカマルは言葉を選ぶ。己より高い実力者に下手な事は言えない。だが自身が有利だと仄めかすように、わざと余裕綽々な態度を装う。
「そうだな…。正直、驚いたぜ。試合相手の見舞いとは…」
「俺は君の行動のほうが驚いたけどね」
シカマルの揶揄に、ナルトはにこやかに答えた。怪訝な表情を浮かべるシカマルを真っ直ぐに見据え、言い放つ。

「君の性格上、面倒事は避ける
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