三十五 尾行
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女の病室へ直行した。だがナル自身も未だ目が覚めていないとなれば、キバが憤るのも仕方の無い事だと言えよう。
病院だということを忘れ、思わず大きくなってしまう声。シノの責めるような視線を感じ、キバは慌てて口を閉じた。だが時は遅く、「何騒いでるの〜?」と廊下から声が掛けられる。
「すみま…―――なんだ。いのか」
「あら〜。アンタ達もナルのお見舞い?」
ひょいっと病室に顔を覗かせた山中いのは、既にいた先客二人の顔触れに目を丸くした。キバとシノもまた、彼女の登場に驚愕の表情を浮かべる。
「本当はヒナタの見舞いに来たのだが、昨日既に退院していたようだ」
「――で。ナルまで入院してるって聞いたから覗いてみたんだけどな」
シノの言葉を引き継いでキバが肩を竦めながら答える。双方の言い分を聞いて、ふうんと相槌を打ったいのは、ナルに視線を投げた。特に悪くない顔色にほっとするのも束の間、彼女の瞳はベッド傍の机に釘付けとなる。
「…誰か、お花を持ってきてあげたの?」
「いや…」
すぐさま否定するシノの返事をキバが遮る。
「その花、俺らが来る前にはあったみたいだぜ?病室に入る前から匂いしてたし」
一際鋭い嗅覚の持ち主の言葉に、いのはパチパチと瞳を瞬かせた。「シカマルでも来てたのかしら〜…」と首を傾げる。
カーテンが閉ざされた病室の机には、色取り取りの花々が花瓶いっぱいに飾られていた。
ひっそりとした廊下の片隅で、彼はごくりと生唾を呑み込んだ。
時計の針がやけに大きく時を刻む。
チクタク・チクタク・チクタク・チクタク……―――――
壁際に身を隠しつつ、忍び足で跡をつける。反響してくるひたひたという足音が彼の耳に僅かながらも届いた。同時に鳴り響く時計の音。静まり返った廊下に滲み渡る単調な音色は、彼の不安を更に掻き立てる。
チクタク・チクタク・チクタク・チクタク……―――――
床に視線を落とす。くすんではいるが掃除は行き届いているのだろう。鉛色のタイルに覆われた床板はまるで鏡のように磨かれている。
このまま尾行していいのか。跡を追い掛けて、それが何になる。危険だ。相手の強さは予選試合で身に沁みているだろう。
突如、足音が途絶えた。
思案に暮れていた彼はハッと顔を上げた。壁際に身を寄せる。
こちらをじっと見つめてくる視線に、彼は身体を強張らせた。再び単調な音だけが通路全体に満たされる。
チクタク・チクタク・チクタク・チクタク……―――――
数秒後、再び聞こえてきた足音にほっと胸を撫で下ろす。だが相手がすっと入って行った部屋を見て、彼は息を呑んだ。
あそこは確か、同じ木ノ葉の下忍――ロック・リーの病室。
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