暁 〜小説投稿サイト〜
あさきゆめみし―テニスの王子様―
7月7日、涙… その四 『逢いたい』
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の胸に倒れ込む。


「泣かせるつもりはなかった……なんて、典型的な言い訳やな」


 あの日、引っ越すことが前々から解っていた彼はどうしても彼女に己の持て余している気持ちと共に伝えたかった。


 …しかし、いざとなるとそんな勇気はなく、どうしたものかと悩んでいたあの昼休み、図書室から教室に戻ってきた侑士の耳に女子たちの楽しそうな声が聞こえてきた。


『なあなあ、なの()はどっちが好きなん?』


『えー……っと』


 その後から如何にも困ってそうな少女の声が聞こえてきた。

 以前にもその内容でクラスの女子が騒いでいたのを思い出し、胸が熱くなるのを感じた。

 (きぬた)なの()は一体どう答えるつもりなのだろう?

 そう思う反面、聞きたくないと思う自分もいた。

 だから、彼女がそれを口に出す前に…


『アホ。そんなん俺に決まっとるやないか』


 つまらない男の意地でなの()を独占したかったのだ。


「…今まで、……待たせてしまってごめんなさい」


 東京と大阪。

 決して遠くではないが、気軽に訪れることができるほど近くもない。

 そんな距離をわざわざイタズラなどの目的で果たしてくるだろうか。

 もしも、そんな人間がこの世にいるならば、それはどんなに寂しいことなのかと想像するだけで涙が溢れそうになる。


『逢いたい』


 そうメールして時は過ぎてしまったが、こうして来てくれたことが今は酷く嬉しい。


「……ほな、これからは小学生のお子様にはできないことをしよか。今まで離れていた分、な?」
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