日輪に月を詠む
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けであった。
詠がどうして拒否しなかったのかと聞いても月は答えずに、私一人で考えてみたいと言っていた。
それからは秋斗の記憶喪失や急な出撃があって、あまりそれだけに思考を割くことも出来なくなった。
迷っていた理由は先日、詠も理解した。
離れ離れになってしまった嘗ての友を一つに集める為。そして自分が彼に預けた責を背負い直す為。最後に……黒麒麟に戻った彼を覇王の元に縛り付ける為。
前のように隣で支えるでは無く、より強固に、周りさえ巻き込んで支える事を望んだ彼女は、自身が責を肩代わりする……つまり彼の『上』に立って望みを叶えるカタチで支えるのが月の狙いだと読めた。
それは一つだけを示すわけでは無く、幾多も、秋斗への想いを詰め込み、彼がどういった思考をしていたか予測しての判断でもあるのだ、とも詠は気付いている。
――桃香に従ってたのが華琳への抑制の為なら、月が『華琳の妹』になる事で叶えやすくなる。雛里も言ってたけど秋斗は乱世に振るわれる剣でいいって考えてたらしい。だから月は内部に潜む抑制の剣として秋斗を使おうとしてる。
壊れずに戻ってもまだ桃香を妄信し続けていたのなら、最強の矛を以って無理やり諦めさせるんだろう。同時に、怨嗟を向けられるはずの飛将軍や専属軍師、神速を仲間に据え、ボク達と同じ存在を増やす事で安息をも約束して。なんて……雛里とボク達に対しては優しくて……秋斗に対しては残酷な手段なんだろう。
まるで戦。
相手の想いを力によって従え、捻じ曲げるその行いは、まさに戦争と同じであった。
華琳がじっと試合を見つめたまま沈黙を貫くだけであったから、思考を回していた詠はブルリと震えた。
「……月が私の求めた王であってくれたからよ」
「え……?」
己が思考に潜り込んでいたために、詠は華琳の言葉を細部まで読み取れずに聞き返す。
華琳は詠の方を向こうとはしない。やはり秋斗と春蘭の剣戟を見つめるのみである。だが、いつもなら質問をした者自身に答えを探させるというのに、今回の華琳は続きを紡いで行く。
「己の半身が、臣下達が……皆が生きてと願っても、月は一人で生贄になる事を望んだ。それが答えよ」
詠の脳内に甦るのは真っ青な顔で責任を果たすと示して微笑んだ月。
それをわがままで抑え込んだのは自分。あの時、詠がそうしていなければ、月は間違いなく自分から民の心を救う生贄となっていただろう。
そこで思い至る。私が求めた、という事は、自分から生贄になってくれるモノを華琳は欲しているのではないか、それを手札として使う算段も既に立っているのではないか、と。
「あんた……もしかして月を――――」
「疑いは軍師に与えられた仕事。細部まで注意を喚起する為に、万事へと思考と思惑を張り巡らせるのは至極当然の
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