日輪に月を詠む
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「一応、春蘭も徐晃の事を思い遣っているのよ。私の思考誘導があったとしても、劉備に信じて貰えなかったと感じたから……徐晃は絶望した。それなら今度こそ、黄巾でその在り方を知っているのも含めて、同じモノを掲げる私に忠を誓わせようとしてる。そうすればもう傷つく事も無くて、主から突きつけられる不信に絶望する事も無い……という感じよ」
「あっきれた。だから試合で勝って華琳に跪かせようとしてるってわけ? 単純バカね」
やれやれという動作を行い言いながらも、詠は何処か嬉しそうだった。春蘭のそういった真っ直ぐなやり方がもう居ない誰かを彷彿とさせる為に。
霞からは降った状況も、その時の心境も詳しく聞いていた。その中で華雄と重ねたと言っていた理由が、詠には今回の試合の事ではっきりと分かった。
――ああいうバカは劉備軍に居なかったなぁ。秋斗も何処か楽しそうだからいっか。
見ると秋斗の顔はにやけている。
命のやり取りや実力の試し合いで心が沸き立つような秋斗では無いのも知っている為に、純粋に春蘭とのやり取りを楽しんでいるのだと分かる。
いい影響を与えてくれているようで何より、と詠は頬を緩ませて試合から目を切った。
次いで、詠は目を鋭く細める。目の前の覇王に、己が心の内をぶつける事を決めて。
「ねぇ、華琳。月の事、どうして妹にしたいくらい評価してるの?」
ずっと聞いてみたいと思っていた。
妹にする、とまで求める理由はなんなのか、詠でさえ分からなかったのだ。
あの絶望の交渉を越えて、月と詠の二人を自身の天幕に呼んで真名を交換し、董卓の真実を知った後、華琳は詠に対して一つの提案をしていた。
それは袁家討伐後に詠が名を変えて表舞台に立つ事。
詠はそれを是とした。
自分の全てを賭けて月を守る為。それが第一。
月が秋斗を支えると言ったので、軍師として並び立って雛里を支える為。それが第二。
傍にいる三人を、詠はなんとしてでも支えたかったのだ。
袁家との戦が終われば目先の大きな敵勢力は消える。それに、袁家が滅べば董卓の真実を知る者でそれを利用する事が出来そうな有力な存在はほぼ居なくなると同時に、華琳が大陸に於いて一番の力を付ける事になる。そうなれば『賈駆』を思わせながらも別のモノが表に立ったとしても不安は少ない。
覇王からすれば、才溢れる詠を侍女に留めておくはずが無い。優秀な者は多ければ多い程にいい。手に入ったのなら有効活用するべきである。
しかし、詠だけでなく、華琳は月に対しても一つの提案をした。
袁家討伐後、自身の妹になれ……とその場で言い放ったのだ。
何故、とその時の月は理由も狙いも尋ねず、考えさせてくださいと答えるのみ。華琳は満足げな笑みを浮かべて、時間はあるからじっくり決めろというだ
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