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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その2)
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帝国暦 486年 9月 1日 イゼルローン要塞 要塞司令官室 ラインハルト・フォン・ミューゼル
これで六回目だ。八月二十二日に遠征軍がイゼルローン要塞に到着してから昨日までに最高作戦会議は五回行われた。そして今日、要塞司令官室で六回目の最高作戦会議が始まる。もういい加減会議は飽きた。俺に自由裁量権を与えて欲しいものだ。そうすれば……。
部屋に入って席に着いた時、周囲を見渡して嫌な予感がした。ミュッケンベルガー元帥を議長として中将以上の階級にある提督達が参集したがその全てが貴族だった。その中には先日中将に昇進したフレーゲル男爵もいる。爵位を持っていないのは俺だけだった。
五度目までは作戦会議は形式的な物で終わった。六度目の作戦会議も形式的な物で終わるだろう。実際に会議はダラダラとなんの意味もなく続いた。索敵情報に惑星レグニツァ方面で反乱軍が徘徊していると言う報告が有っただけだ。それもかなりあやふやな情報で信憑性は全く高くない。
相変わらずフレーゲル男爵がネチネチと絡んでくる。嫌な奴だ。適当に流そうとしていたが、フレーゲル男爵に便乗して絡む阿呆が居る。徐々に我慢できなくなってきた。心がささくれだってくる。
「年末にはローエングラム伯爵を名乗られる御身、我ら如き卑位卑官の輩は、うかつに口をきいてもいただけぬであろうからな」
フレーゲル男爵が冷笑交じりに絡んできた。馬鹿か? フレーゲル、貴様一体年は幾つだ? なりはでかいが精神年齢は幼稚園児並みだな。
「卑位卑官などとおっしゃるが、卿は男爵号をお持ちの身。自らを平民と同一視なさるには及ぶまい」
何処の馬鹿だ、爵位しか誇る物のない阿呆が! お前達と同一視などこちらからお断りだ!
フレーゲルが顔を顰めた。何だ、不満か? この寄生虫が!
「むろん我々には、代々、ゴールデンバウム王朝の藩屏たる誇りが有る。平民や成り上がりなどと比較されるのもおぞましい」
上等だ、この馬鹿!
「民衆に寄生する王侯貴族の誇りか!」
「黙れ! 儒子!」
フレーゲル男爵が怒気も露わに立ち上がった。やる気か? 望むところだ、立ち上がって身構えた。
「両名、止めぬか! 」
ミュッケンベルガーが俺達を止めた。
「ミューゼル提督に命じる。惑星レグニツァの周辺宙域に同盟と僭称する叛徒どもの部隊が徘徊しているとの報が有る。直ちに艦隊を率いて当該宙域に赴き情報の虚実を確認し、実なるときは卿の裁量によってそれを排除せよ」
頭を冷やせ! ラインハルト。俺の言った言葉は危険だ。敵に利用されたら身の破滅になる。ミュッケンベルガーの命令を利用して切り抜けろ!
「謹んで命令をお受けします」
「うむ」
ミュッケンベルガー元帥が俺を見て満足そうに頷いた。横目でフレーゲル男爵を見た
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