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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その2)
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たのだろうか……。笑みを浮かべて近づく少佐に少し気圧されるような気がした。コルプト子爵の事を思い出し、慌てて首を振った。忘れろ! あれはもう終わった事だ、忘れるんだ!

「どうした、少佐」
「耳を……」
「耳?」
耳を貸せということか? 少し背を屈めると彼女が俺の耳に顔を寄せてきた。周囲の目が気になったがどういう訳か逆らえなかった。

彼女が小声で俺の耳に囁く。くすぐったい快さよりもその内容に驚愕した。驚いて彼女を見ると悪戯っぽい表情で俺を見ている。
「必ず勝てます」
「そうだ、必ず勝つ」
俺は今こそ勝利を確信した。後三十分で味方は勝つ……。



帝国暦 486年 9月 6日   イゼルローン要塞  ラインハルト・フォン・ミューゼル



惑星レグニツァの戦闘は帝国軍の勝利で終わった。惑星レグニツァの惑星表面はヘリウムと水素からできている。そこに核融合ミサイルを撃ち込んだ。艦隊が撃ち込んだ核融合ミサイルの大群はヘリウムと水素の大気層を破壊し巨大なガスの塊を下方から反乱軍に叩きつけた。

反乱軍は混乱し俺の艦隊はそこを攻撃した。かなりの打撃を与えることが出来ただろう。反乱軍は撤退し戦域を離脱した。こちらもそれ以上の追撃は行わなかった。所詮は局地戦での勝利だ、無理をして逆撃など食らっても詰まらない。反乱軍を惑星レグニツァより排除した。命令は遂行したのだ、問題は無い。

一部の士官が、運が良い、風に救われたと中傷しているのは知っているが反論はしなかった。あの戦いの困難さを連中は知らない。それに風に助けられたのは事実だ、自慢できる戦いではない。

俺にとって嬉しかったのは三人の分艦隊司令官、ビッテンフェルト、ロイエンタール、ミッターマイヤーが十分に信じられると分かった事だ。彼らはあの悪環境の中、最後まで崩れず戦った。これからも俺の力になってくれるだろう。

ミュッケンベルガーに報告をし、部屋に戻ろうと廊下を歩いていると正面からフレーゲル男爵が歩いて来るのが見えた。出撃前の事を思いだす、戸惑いながら歩く、徐々に距離が縮まった。すれ違う時、フレーゲル男爵に腕を掴まれた。振り払おうとすると低く小さい声が聞こえた。

「気を付けろ、ミューゼル」
驚いてフレーゲル男爵を見た。俺を助けようと近寄ったキルヒアイスも立ち止まっている。

「卿はミュッケンベルガー元帥に忌避されている。次の戦い、気を付けるんだ」
低い声だ。
「どういう事だ」
こちらも小声になった。フレーゲル男爵はじっと俺を見ている。真剣な表情だ、嘲りも愚弄もない、そして傲慢さもなかった。

「油断するな、厚遇されていると思ったら罠だと思え」
そう言うとフレーゲル男爵は腕を離し何事もなかったように歩き出した。どういう事だ? 今のは脅しじゃない、
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