暁 〜小説投稿サイト〜
異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その2)
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
は間違いが無い。幾分気が楽になった。

「ラインハルト様」
「何だ、キルヒアイス」
「嫌な予感がします、大丈夫でしょうか」
「……」
気が重くなった。キルヒアイス、お前だって間違う事は有る、そうだよな……。



帝国暦 486年 9月 4日   惑星レグニツァ  シュワルツ・ティーゲル  フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト



惑星レグニツァはガス状惑星だ。母恒星から約七億キロの楕円形軌道上を十万時間強の周期で公転している。赤道半径約七万キロ、質量二千兆×一兆トン、平均密度は一立方センチにつき一.二九グラム。中心には重金属と岩石からなる直径六千四百キロの固核が有り、その上に極度に圧縮された氷と水の層が有る。さらに上層をヘリウムと水素の流動体が占める。ごく初級の天文学の教科書にモデルとして記述されそうな、典型的な恒星系外縁部ガス惑星である……。

さっぱり分からんな、溜息が出た。モニターに映っている惑星レグニツァの詳細を見てもさっぱり分からん。これで初級の天文学か? だとしたら俺には絶対分からん世界だ。

だがこの惑星を艦橋のメインスクリーンから見ると厚い蜜雲の流れと電光のはためきが映っている。混沌と暗鬱に満ち溢れた惑星だ。映画にでも出てきそうな映像だが、現実世界でこの混沌の惑星は嬉しいとは言えない。俺の心は暗鬱に占領されている。

俺の艦隊はミューゼル艦隊の先頭に居るがどうにも不安だ。嵐と厚い蜜雲、この自然環境が情報の伝達を阻んでいる。無人の索敵機を飛ばしてはいるが索敵は困難な状態だ。整然たる艦隊運動を困難にもしている。全く有難くない状況だ。この状況で奇襲を食らったらと思うと気が気ではない。上手く奇襲をかけられる側になれればいいのだが……。

「提督、ミューゼル提督は何時までこの嵐の中に居るのでしょう」
「さて、分からんな」
グレーブナーが不安そうな表情をしている。気持ちは分かる、ここは余りにも戦いには向いていない。しかしもし反乱軍が雲の外に布陣していれば一方的に攻撃を受ける事になる。艦隊は致命的な損害を受ける事になるだろう。

「敵です! 索敵機が正体不明の飛行物体群を発見! 距離、至近!」
オペレータの悲鳴のような声に艦橋が緊迫した。先手を取られたか! 厄介な事になった! オペレータ達が次々と報告を上げる。いずれも状況は良くない。

「第一級臨戦態勢! 司令部に連絡、敵、至近! 急げ!」
俺の声にオペレータがミューゼル提督に通信を入れる。頼むぞ、上手く届いてくれよ……。敵の大艦隊がガス状惑星の雲平線から姿を現したのは十分後の事だった。


戦闘は典型的な遭遇戦になった。俺が敵発見の報告をしてから戦闘が始まるまで三十分もかからなかった。陣形も何もない、正面からの殴り合いになる筈なのだが
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ