第八十二話 近付く卒業その六
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「だから気になってるの」
「そうなのね、気になるのならね」
「お茶飲めばいいのよね」
「甜茶ね」
母もこの茶の名前を話に出してきた。
「それ飲めばいいから」
「甜茶ってどんなのなの?」
「味とか?」
「うん、どんな感じのお茶なの?」
「甘いわね」
「甘いの」
「それでちょっと癖のある味なのよ」
そうだとだ、母は娘に話した。
「人によっては飲みにくいかも知れないわね」
「そうなの」
「何なら買って来るけれど?」
こう娘に言うのだった。
「飲む?」
「ううん、それじゃあ」
琴乃も母にそう言われてだった、少し考えてから答えた。
「お願い」
「わかったわ、それじゃあね」
「それと風邪をひかないことね」
「わかってるじゃない」
「季節の変わり目だからって」
琴乃は部長に言われた言葉をそのまま母に言った。
「言われたし」
「そう、だからね」
「甜茶を飲んで」
「そう、身体を温かくしてね」
「冷やしたらまだ駄目よね」
「女の子は身体冷やしたら駄目よ」
非常によく言われることだがあえて言った母だった。
「理由はわかるわね」
「結婚して子供を産むから」
「当分先になってもね」
「一生にはならない様にするわね」
「そのことも気をつけてね」
そしてと言う母だった。
「とにかく、身体はね」
「冷やさないのね」
「熱過ぎても駄目だけれどね」
過ぎたるは及ばざるが如しというがこのことは身体についても言えるのだ。確かに冷やしてはいけないが熱過ぎてもよくないのだ。
それでだ、母として娘にこう言うのだ。
「夏はね」
「クーラーもいいの?じゃあ」
「適度ならね」
それならばというのだ。
「あくまで適度よ」
「冷やし過ぎないのね」
「扇風機もね」
こちらもだった。
「あまり冷やし過ぎないことよ」
「つまり適度?」
「そう、適度よ」
これが一番いいというのだった、母も。
「夏でも冬でもね」
「それが体調にも一番いいのね」
「そういうことよ。夏にラクダのシャツ着て寝られないでしょ」
「そんなことした人いるの?」
「いるわよ、本当かどうかわからないけれど」
実在したらしいとだ、琴乃に言うのだった。
「金田正一さんね」
「あの四百勝の?」
「あの人現役時代はそうだったらしいのよ」
夏でもそうしたシャツを着て寝たのは言うまでもなく肩を冷やさない為だ。金田がそこまで己の身体に気を使っていたという話である。
「そこまでして身体に気をつけていたのよ」
「そうだったのね」
「そう、けれどこれは極端だから」
「金田さんのことは」
「かえって身体が熱くなってよくないから」
熱がこもってだ、かえってよくないのではというのだ。
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