第六章
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第六章
「そしてあとの半分は」
「男の子ね」
「そういうこと、半分は男の子なのよ」
彼女が言うのはこのことだったのだ。
「男の子ね。半分はそうでしょ?」
「確かにね」
唯もその言葉に頷くのだった。これはほんの少しばかり考えれば当然のことだった。世界の半分は男の子であるのは自明の理であった。
「それで友樹君は」
「男の子でしょ?当然」
「ええ、その通りよ」
他の何者でもない。だからこその彼氏である。
「男の子よ。紛れもなく」
「そう、男の子だからよ」
彼女の言葉はさらに発せられる。
「だからわからなかったのよ、彼は」
「男の子だからなの」
「そうよ。男の子はお化粧とかまずしないから」
そのことも話すのだった。
「わからなくても気付かなくても当然なのよ」
「そういうことだったの」
「まあ、はっきり言って男の子は皆そうよ」
諦めを通り越して達観に達している言葉だった。
「気付いてもらうにはね。まだ足りなかったのよ」
「アイシャドーで駄目だったの」
唯は鏡に映っているその顔を見て項垂れた顔になる。確かに見事に決まっているアイシャドーであるがそれでも駄目だったからである。落胆せずにはいられなかった。
「これで駄目なんて」
「まあ落ち込まないことね」
「そうそう」
しかし周りがここで唯を宥めるのだった。
「次があるから」
「それによかったじゃない」
「よかったって?」
ふと表情を消してみんなの言葉を聞くのだった。
「よかったって何が?」
「友樹君の言葉を」
「気遣ってくれてるじゃない」
皆が言うのはこのことだった。
「それもかなりね」
「それってアイシャドーに気付いてもらうよりよくない?」
「言われてみれば」
皆の話を聞いて少し納得した顔になってきていた。
「そうよね。確かに」
「そうでしょ?だったらよ」
「それはそれでよかったじゃない」
「そういえばそうかしら」
これで唯も納得したのだった。
「考えてみたら。友樹君私のこと気にかけてくれてるしね」
「そうよ。それって凄い有り難いことじゃない」
「好きになってもらってるってことはあってもよ」
それだけではないということだった。確かに好きというのはそれだけで有り難いことだったがそれにプラスアルファがつくのはもっとよかった。
「じゃあそれじゃあ」
「まあアイシャドーは仕方ないけれどね」
「それは次ってことで」
こういうことになるのだった。
「だからよ。何かもっといい感じだし」
「いいじゃない、それで」
「そうよね。じゃあそれでね」
納得していた唯にはもうそれで異論はないのだった。
「いいわ。友樹君って本当に」
「本当に?」
「最高ね。優しくて」
満足もするのだった。
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