第三章
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部屋の窓を見ると静かになっていた、これまでの吹雪が嘘みたいに止んでいた。皆はその窓の外を見て私に言ってきた。
「チャンスじゃないの?」
「今のうちに行けばいいわ」
「そうしたら写真撮れるわよ」
「夕暮れのね」
「そうね」
私も皆の言葉に頷いた、そうして。
カメラを手に取ってオスロの街に出た、白く化粧された街を紅い夕陽が照らしている。白い街を紅の夕陽が。
それで白と赤の二色の中で黒い影が長くなっている街をすぐに写真に撮った、そうして。
その写真を持ってホテルのカウンターでたどたどしい英語でこうお願いした。
「これを手紙と一緒にここに」
「郵便ですね」
「お願いします」
カウンターのホテルマンの人も英語で応えてくれた、私もそうした。
「それで」
「わかりました、それじゃあ」
「はい、それで」
こうしてだった、私はその写真を彼に贈ることが出来た。このことに満足して。
部屋に戻ると皆が私に笑顔で言ってきた。
「お疲れさん、撮れたみたいね」
「上手くいったのね」
「ええ、間に合ったわ」
実際にそうなったとだ、私は皆に満面の笑顔で答えた。
「何とかね」
「じゃあこれでよね」
「心置きなく日本に戻れるわね」
「やりたいことは全部やれたし」
「それじゃあね」
「うん、後はね」
この旅行でやりたいことは全部した、それならだった。
私は皆にだ、その満面の笑顔で言った。
「飲みましょう、お酒ね」
「ええ、ノルウェーで最後の夜だから」
「それじゃあね」
皆も笑顔で応えてくれた、そうして。
そのお酒を心ゆくまで飲んだ、どうもノルウェーはお酒には厳しいらしいけれど外国人ということか私達は飲むことが出来た、そのうえで。
私達は二日酔いになりながらも最後のお土産を買ってそれで日本に戻った、けれど飛行機で戻ったので。
彼からは苦笑いでこう言われた。
「写真?まだだよ」
「えっ、そうなの」
「だって日本に戻る前の日に撮ったんだよね」
「ええ、そうよ」
「それだったらね」
「写真が日本に着くのはまだなのね」
「手紙もね」
そちらもだというのだ。
「着くのはもう少し後だよ」
「そうなのね」
「まあ届いたらね」
それからだと、彼は私に言った。
「二人で見ようね」
「そうね、それじゃあね」
私はこのことは忘れていた、郵便の方が自分よりも遅く来る場合もある、それは外国旅行ではままあることだ。
それが今だった、私はこのことにはさいまったと思いつつ彼に言った。
「待ちましょう、暫く」
「オスロの夕暮れ楽しみにしてるよ」
この言葉通りだった、彼は私と一緒にその写真を観た、手紙と一緒に二人で観たその夕暮れはオスロで観た時よりもずっと綺麗だった。
ト
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