安息の住処
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あなたが傍にいるだけで、こんなにも幸せを感じてしまう。
あなたが笑顔を向けてくれるだけで、こんなにも暖かくなってしまう。
違うと分かっているのに
傷つけていると分かっているのに
愚かしい事だと知っているのに
私は嬉しくて
私は哀しくて
それでも、これしか……
あなたと、好きな人達と、『あの人』を救いたかった皆の想いを掬う方法は無い。
背反した感情を抑えつけながら微笑みを向ける。
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
あの時のように抱きしめる事は出来ません。
あなたの苦しみを軽くも出来ません。
そうしている内に……あなたがまた一歩、『あの人』に近づいた気がした。
†
幾多の傷が走った身体、さらりとした灰色の髪を三つ編みに括り、眉を寄せて街を巡回する少女。
その隣を歩くのはおしゃれな服を着こなし、茶髪を同じく三つ編みに括って、エビの尻尾のように愛らしく跳ねさせる少女。
普段なら此処にもう一人いるのが華琳の治める街での日常であるのだが、その最後の一人は特殊な業務の為に今は居ない。
「ふぁぁ……やっぱりこの街が一番なのー」
のんびりと言葉を宙に溶かしたのは茶髪の少女于禁――――真名を沙和という。
大きなあくびをしながらも周りを気にして両手を添える仕草からは、やはり女の子なのだなという感じが見て取れる。
「沙和、帰ってきた途端にそんな気の抜けた様子では警備隊としてダメだと思う」
目を瞑り、厳しくも優しく諌めたのは灰髪の少女楽進――――真名を凪。
袁家の策略によって方々へと戦に赴いていた彼女達であったが、数奇な事に、帰還したのはほぼ同時期であった。
戦後処理業務から数日後、自分達の隊の兵達に幾日かの休息を言い渡し、しかし彼女達はそれだけが業務では無いのでこうして街に繰り出している。
平時に於ける彼女達の仕事は街を守護する警備隊。
劉備軍の治めていた平原で扱われていた区画警備隊、それを参考に華琳と桂花が独自に昇華させたモノの隊長達である。
凪は東区、沙和は西区、ここにいない少女――――真桜は中央区の担当である。
ただ、真桜だけは他にも工作兵を扱う為に、新しい兵器や新規の絡繰りの開発に時間も取られ、彼女達二人が中央区まで手を回す事が多い。
そして真桜がいつもの如く工房に籠った為に、今日は二人で中央区の巡回をしている真っ最中であった。
「ぶー。戦が終わったのに厳しい顔のまんまじゃ街の人達も心配になっちゃうの」
「……でもわたし達が居なかった事で緩くなり過ぎてるかもしれない」
「むむむ……」
互い
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