安息の住処
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「……え?」
呆然。
わたしは彼が何を言っているのか分からなかった。
「さっきのアレだよ! なんだアレ!? 手からも出せるのか!? 手からも出せるんだよな!?」
早口で興奮気味に捲し立てる彼に、わたし含めて沙和も、月もぽかんと口を開けていた。
漸く停止していた思考が回り出す。
既に毒気が抜かれてしまった。悔しさも何も無くなった。彼が子供のようにはしゃぐのを見ていると、心底どうでも良くなったのだ。
「はあ……一応手からも出せるとは思いますが……」
「よっしゃあああ! 最っ高だな! じゃあこういう構えで放てるか!?」
彼は両手を腰の辺りに持って行って珠を包むような構えを取り、手に包んだモノを飛ばすような動作をした。
言われた通りに私は構えて、少し疲れるけど掌に少量の氣を集中させて……放ってみたらぼんやりと丸い氣弾が飛んで行った。
「おおぉぉ! やばいやばいやばい! なんでもアリだなこのせか……コホン。うん、とにかくやばいな!」
宝物を見つけた子供のような笑顔だった。純粋無垢で、夢を追いかける子供。
そういえば、と思い至る。
先程、警備隊の連中から、彼が関わったと聞いたから詳細を確認すると、子供達に聞いた方が速いとはぐらかされた。
子供達に聞けば、同じように遊べる人だという。悪戯を一緒に計画したり、子供にからかわれて本気でへこんだりと……精神年齢が子供なのかもしれない。
正直、前の彼とは似ても似つかない。さっきの試合での彼ともかけ離れすぎている。
でも……嫌いにはなれない。
きっとこれが今の徐晃殿、いや、素の徐晃殿なのだろう。あの悪戯が大好きな店長の友だったのだから。
「ってなわけで、教えて欲しいんだが……」
尚もそこに拘る彼は、やはり子供に思えた。
この笑顔を曇らせるのは……少々忍びないが、現実は教えなければいけない。
「その……氣弾は特殊でして通常の人には放てないんです。わたしの場合も何年も修行をして、さらには氣の体外放出の素質があったから手に入れられただけで……ほぼ無理かと」
愕然と、この世の終わりのような絶望の表情で彼は地に膝を付いた。
「ちくしょう……っ! そうだよな……簡単に出来るわけないよな……男のロマン、だもんな……」
ぶつぶつと呟いている彼を見ていると。どうしてこうまでも哀しくなるのだろう。
空を飛べると信じている子供を楼閣の上から突き落として、飛べない事を教えたような……そんな気分だった。
「だ、大丈夫です。男の人でもそこまで武力が高いのは凄く特殊ですから、出来るようになるかもしれませんよ?」
「そ、そうなの! 凪ちゃんみたいに何年も修行して、ちょーっと死に掛けるくらいの無茶をしたら……きっと出
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