安息の住処
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続けられた彼の発言に、三人共が驚愕に包まれる。
可愛いなどと……男の人がそんな軽く言う言葉では無いはずだ。
なのになんでも無い事のように言って、お世辞には思えないような声音で、真っ直ぐわたしと沙和を交互に見据える瞳に嘘はなかった。
褒められたのが恥ずかしくてわたしの顔には熱が徐々に昇ってくる。自分が可愛くなんかないのは分かってるのに……告げられた言葉は捨てているはずの女の自分を擽る。
――だって……男の人に……か、可愛いなんて言われたのは初めて、だから。
誤魔化すように隣を見ると月は耳まで赤く染めていた。沙和は……楽しそうな笑みを浮かべた。
「徐晃さんって結構……むふふ」
「どうした? なんかおかしいこと言ったか?」
「なんでも無ーい♪ あははっ、これからきっと楽しくなるなーって思っただけなの」
訂正しよう。意地の悪い笑みだった。
彼は不思議そうに首を傾げるだけ。鈍感、と聞いたがまさかここまでとは……。
このままでは沙和と彼の作る雰囲気に流されてグダグダと時間を浪費してしまう気がする。
それもいいかもしれない、と感じてしまっている自分に気付き、わたしはため息を一つ落として、空気を切り替える事に決めた。
「徐晃殿、これからこの軍で共に戦う身として、よろしくお願いします」
「あ、沙和も。これからよろしくなのー」
「おう、二人共よろしくな」
どうにか沙和も乗ってくれたので、ほっと一息。
それから彼は鍛錬をするというので、沙和は不服そうにしていたが共に付き合い、暗くなる頃に私達は解散したのだった。
前の彼が居ないというのは確かに落ち込んだ。だけど、どこか新鮮な出会いを嬉しく思っている自分も居た。
気になるのは試合中に彼が変わった事だけだが、これからは沢山時間がある。ゆっくりと知って行こう。
もう、わたし達は同じ軍で、華琳様の元で共に戦う軍人なのだから。
†
遣り合う前に溢れたのは吐き気のするような重圧と、心打ち震える安息。ほんの僅かな悲哀。
引き摺るように、何かが心に引っかかった。
しかしその安息を求めてしまった。
殺気、というモノを初めて受けた。
身を突き刺すようなソレは自身の何かを壊した。
あの時……『待っていた』と誰かが脳髄で囁いた気がした。
爆発したのは暴力的な衝動とはかけ離れた感情、それは歓喜。
向かい来る敵を、立ちふさがる敵を、自身の邪魔をする敵を、俺に誰かを救わせないようにする敵を……この手で切り払える事が嬉しく感じた。
自分の力を明確に理解したから、抑え付ける事は……どうにか出来ていた。だからすぐに
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