安息の住処
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に意見を言い合い、どちらも一理ある為に引くことは無く、厳しく見つめ合う二人であったが、
「えへへ、じゃあ沙和が緩くして、凪ちゃんが引き締めたら丁度いいの♪」
ふんわりと笑った沙和によって凪も思わず微笑み、二人の間の空気も直ぐに緩くなった。
数瞬、ハッと気づいて直ぐにキリと表情を引き締める凪。その慌てた様子に耐えきれず、沙和はおかしそうに笑いだす。
「あははっ♪ 沙和の勝ちー♪」
「う……。ふふ、やっぱり沙和には勝てないな」
苦笑を零す凪であったが、彼女の張りつめた心は柔らかく、もう厳しい空気になろうとしてもなれなかった。
沙和の独特のペースに巻き込まれてしまうと、凪はいつもこうして砕かれてしまう。
フンス、と自慢げに胸を張りながら歩く親友を見つめながら、凄いな、と凪は尊敬の色を瞳に浮かばせた。
生来の生真面目さから、自然と周りが近付き難い雰囲気を作り出してしまう凪ではあるが、沙和が隣に居てくれるだけでそれも打ち消される。真桜にしても、傍にいるだけでその軽い気質から巻き込んでいく。
凪の中身を知った人であれば、優しい心を理解している為に何の警戒も無く近づく。しかし警備隊隊長をしている以上は、街に出て人と触れ合う機会も多い為に、初対面の人は彼女の作る雰囲気と、身体に走る傷跡から怯える事が多い。
ありがたい、といつも感じていた。自分が持っていないモノを持っている少女達が隣に居てくれる事を。
真桜に対しても思う所はあるが、凪にとって沙和は憧れの対象。可愛らしい仕草、精一杯、心より女の子としての自分を楽しんでいる彼女に、嫉妬や羨望では無く憧憬を向けていた。
ただ、凪はそうなりたいとは思っていない。
彼女は守りたいのだ。自分が傷つこうとも、女としての自分をかなぐり捨ててでも、誰かを守り抜きたい。
同じ村からの付き合いである二人を守りたくて武に身を窶し、傷だらけになりながらも力を得てきた。今は彼女達と共に、多くの人を守りたくて此処にいる。
だから、彼女は沙和に憧れるも、そうなりたいとは思わず、必ず守り抜こうと意思を高めていく。
今回も同じように、親友である沙和の凄さを知って、グッと拳を見えない所で握りしめた。
「そういえば……凪ちゃんも徐晃さんが記憶を失った事は聞いたの?」
ふと、歩きながら零された言葉に、凪は一寸だけ思考に空白が齎された。
既に主からソレは聞いていた。帰って来てから戦後処理業務に取り掛かる前に。
客分として仕える事になった彼は記憶を消失している、と。
「……っ……ああ、聞いた」
ギリと歯を噛みしめ、その隙間から漏らしたような声音は……怒り。
哀しそうに見つめる沙和は、その先の言葉を聞かず、自分から何かを直ぐに紡ごうともしなかった。
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