クリスマスの攻防
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はズボンばかりじゃない」
「それでも気を遣ってるのよ」
智子はムッとした顔で反論してきた。気付かないうちに弘樹の手を強く握ってきていた。
「ズボンだって色々あるでしょ」
「確かにそうだけれど」
「スカートの下に履いたりして。結構これでも考えてるんだから」
「そういえばそうだったかな」
「そうだったかなって見てないの!?」
「いや、見てないわけじゃないけれど」
失言だった。弘樹は慌てて自分の言葉を引っ込める。
「ただ、細かいところは」
「その細かいところを見て欲しいのよ」
智子はムッとしたまま言った。
「女心ってやつよ。わかる?」
「わかったようなわからないような」
「じゃあわかりなさい。いいわね」
「それでわかるものなの、女心って」
「人間努力すれば何でもできるのよ」
こう言い切った。
「努力すればね。不可能はないわ」
「その努力をもうちょっと他の方向に向けてくれれば」
「って何が言いたいのよ」
実は智子は学校の勉強はあまり得意ではない。弘樹の方がよくできる。それで弘樹によく教えてもらっていたりする程である。
「いや、別に」
だが弘樹はそれは誤魔化してきた。
「ただね」
「今度はそうはいかないから」
どうやら気付いたらしい。それについて言及してきた。
「期末は赤点は取らないからね」
「それじゃあ頑張ってね」
「それで楽しくクリスマスにデートするんだからね。覚えておいてよ」
「服もね。楽しみにしてるよ」
「ええ、楽しみにしてて」
そう言い返す。
「そっちもね。楽しみにしてるわ」
「了解」
そんな話をしながら二人は紫から青になっていく道を歩いていった。そして駅で別れた。その日はそれでお別れとなった。
翌日から智子は教室でファッション雑誌ばかり読むようになった。暇があると雑誌を読んでいる。それに気付いたクラスメイトの女の子達が彼女に声をかけてきた。
「ねえ小林」
「何?」
彼女の姓である。それを呼ばれて顔を上げた。
「最近どうしたのよ、ファッション雑誌なんか読んで」
「漫画とかはもう読まないの?」
「今はね」
智子はにこりと笑ってこう答えた。
「こっちの方が大事だから」
「そうなの」
「もうすぐクリスマスだしね。何がいいかな、と思って」
「クリスマスねえ」
「でしょ。やっぱりあの日だけは特別にお洒落したいし」
わりかし純粋な乙女心であった。だがクラスメイト達はそれを聞いて気付いた。
「もしかして平畑君とのデートの為に?」
「えっ、それは」
図星であった。顔だけは赤くはならなかったがギクッとした顔になる。
「それは、ねえ」
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