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相棒は妹
志乃「納豆ってさ、人類の神秘だよね」
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 「ううん、使えるよ。今日から営業再開するんだって」

 なるほど。だから今日にしたのか。前もって情報収集してくれるなんて嬉しい限りだ。

 「あそこの店員、俺の分の料金今日だけタダにしてくれないかな」

 「あ、そうだ。今日は私の奢りだから好きなだけ歌ってね。私もいっぱい歌うし」

 いやいや、それはダメだろ。男だったら話は別だけど、女の子にカラオケの料金奢ってもらうのは無しだろ。平日でもカラオケは高いぞ。

 俺がそう言うと、五十嵐は仕方なくといった感じに了承してくれた。こいつ、本当は律儀な性格なんだな。口の軽さだけ直せば完璧なのに。

 その後、俺達は学校の事とか互いの趣味とか話しながら街に向かい、やがて因縁深いカラオケ店までやって来た。確かに営業しており、まるで事件が起きたとは思えない程に自然としていた。

 中に入ると、その自然さは余計に伝わってきた。辺り隅々まで掃除されており、清潔感が伊達じゃなかった。

 「いらっしゃいませ。……あっ!」

 店員よ、客の顔を見て「あっ!」はかなり失礼だぞ。

 しかし、そんな細かいところを指摘するのも面倒なので、店員には軽く会釈しておいた。

 すると、店員は俺に対して深々と頭を下げ、感謝の言葉を紡ぎだした。

 「お客様に怪我を負わせる事になってしまいまして、誠に申し訳ございませんでした……。こうしてまたご来店していただけるとは思いませんでした。これからもどうぞ当店をよろしくお願いします」

 「じゃあ、今日の料金タダにしてくれませんか?」

 もののついでに店員に尋ねてみた。

 店員は少し困ったような顔をしたが、やがて意を決したように勢いよく顔を上げて、

 「分かりました。例外として、お二人様の今日の料金は無料とさせていただきます!」

 「マジで?」

 「え、私も?」

 まさか本当にタダにしてくれるとは思っていなかった。なにせ、あの時はカラオケ店のために行動したんじゃなくて、妹のために動いたんだから。今になって少しだけ罪悪感が湧いてきたが、時既に遅し。

 結局、五十嵐まで無料キャンペーン対象に選ばれ、俺達はプラスチックのバスケットを持って、指定された部屋へと向かう事になった。

 「本当に良いのかな?赤字で潰れたりしたらどうしよ」

 「次からはちゃんと払うんだし、大丈夫だろ」

 五十嵐の言葉に胸がチクっとしたので、あえて前向きな発言をしておく。そうでもしいないと、あの店員の優しさに申し訳なくなってきてしまう。ごめん、眼鏡の店員さん。

 「まぁ、今日は許される限り歌うか」

 「うん、そうだね!でも、なんかお詫びした感じになってないけどね」

 「気にすんなって。今度割り勘で来れば
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