志乃「私がしたいのは、兄貴と一緒に一つの動画を作ること」
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ーに合わせ、曲の練習もしているのだろう。
「お前、いつの間にこんなもの用意したんだ?」
「ネットから曲の内容とか楽譜が書いてあるデータ見つけてコピーした。私と兄貴が使ってる紙一緒のやつだから、私の字が入っちゃってるけど」
「いや、全然構わないんだけど……」
志乃には、感謝してもし尽くせない程に借りを作っている。生意気でウザったい面を持っていながら、こいつは人のために尽くせるだけの思いやりを持っているのだ。いつもと違う展開に、俺はタジタジになってしまった。
「嬉しくないの?」
「う、嬉しいに決まってんだろ!お前がここまでしてくれるなんて……何で今まで黙ってたんだ?」
「兄貴の驚く顔が見たくて」
少し不敵に笑う妹を見るに、どうやら俺は志乃が満足いくぐらいにびっくりした顔を作っていたらしい。全部してやられたな、こりゃ。
だが、今はそれでも良かった。今のやり取りだけで、この世が終わってもいいぐらいスッキリした。本当に嬉しかった。
志乃はピアノで確かな実力を持っている。もしかしたらガヤガヤ動画のジャンルの『弾いたったった』のピアノアレンジでランクイン出来るかもしれない。なにせ、こいつは中学の時、ピアノで全国大会に出てるんだからな。
でも、こいつは俺の『声』を混じらせて動画を投稿する方を選んだ。きっと、その中には退学した俺に歌に対する明確な目的を持たせるという意味も含まれているんだろう。
これを直接本人に聞いてみると、
「兄貴、自分を奢るなんて恥ずかしいよ。私は兄貴の常人よりちょっとだけ発達した歌唱力に目を付けただけなんだから」
と無表情顔で言われた。ホント、ツンツンしてる上にポーカーフェイスだな。まぁ、そこが俺の妹の可愛いところだけどさ。
俺も、そんな妹の優しさに乗っかるとしよう。なんか、助けられてばっかりだな。
けれど、その分のお返しはちゃんと果たすつもりだ。
「よし!志乃、絶対ガヤガヤ動画で一位取ろうな!」
「兄貴、喉壊したら殺すから」
「お、おおう分かってるって。絶対約束な」
そして何より、こいつは有言実行の常識人だ。殺すことにも何の感慨も抱かない。
あれ、これって常識人って言うのかな?
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