第四章 雨の想い編
第一話 雨にふられて
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
見た彼女の、真剣な眼差しは優しくて、そして――――――悔しそうだった。
「私達ができることなんてないよ。 ルチアちゃんと翔が出さないといけない答えだから」
そう言うと紗智は立ち上がり、再び校内に戻った。
置いていかれたルチアは一人、空を見上げて一人静かに考えた。
紗智が放った言葉‥‥‥そこに込められた想いが、ルチアに伝わってきた。
彼女もまた、何かに思い悩んでいたのだ。
そしてその何かとはきっと、今のルチアが悩んでいることと同じことで、彼女はルチアよりも先に答えを出したのだ。
そして先ほどの答えが、紗智の答えなのだろう。
「“紗智”――――――ありがとう」
答えはまだ出ない。
けれど、自分が何をするべきなのかを理解した。
それは、友達以上に――――――大切な親友である、紗智の想いを無駄にさせないために。
紗智が自分の想いを犠牲にして伝えた言葉を、絶対に無駄にさせない。
そう決意してルチアはお昼休みが終わるのだった――――――。
***
「はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥」
息が乱れ、脇腹が痛く、いつもより多めに空気を吸い込む。
そして落ち着くと、ゆっくりと歩き出す。
放課後、紗智は一人で帰っていた。
武や翔達にはバレないように、走っていた。
あまり運動が得意ではない紗智だが、今日は体力の限界まで使ってここまで走った。
今は、一人にして欲しかったのだ。
なぜなら今は、――――――感情が抑えられないからだ。
先程までずっと溜め込んできた感情、想いを、抑えきれないからだ。
「‥‥‥っぅ‥‥‥ぁ‥‥‥」
そして紗智は一人、灯火町の南部にある人気のない山あいの頂上で、その溜まりに溜まった感情を解き放った。
「ああああああああああああッ!!!」
胸が締め付けられるように痛い。
喉が貫かれたように痛い。
頭が破裂するかのように痛い。
肺に溜まった酸素全てを使って放ったあと、もう一度大きく息を吸って、再びはき出す。
瞳から雫が溢れているが、そんなことは気にしない。
きっと今、顔は紅く、涙でぐしゃぐしゃだろう。
口の中は僅かに、血の風味がした。
だけど、そんなことは気にしなかった。
今はただ、この溜まりに溜まった想いを吐き出したかった。
「あああああああああああッ!!!!」
この想いが全て、この身体から無くなるまで‥‥‥彼女はずっと、叫び続けていた。
――――――「こんなところで、何してんだ?」
「ッ!?」
その時、背後から足音と同時に一人の男
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ