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魔法使いの知らないソラ
第二章 迷い猫の絆編
第四話 迷い猫の涙
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翔は慌てて駆け寄った。

そして情景反射で魔法使いとしての姿、白銀のコートを羽織る姿となる。

魔法でショコラを助けるためだ。

だが、翔の想いを否定するようにショコラは言った。


『ごめんなさい。 私に、トドメを刺して』

「な‥‥‥なに、言ってるんだ‥‥‥」


翔は言葉を詰まらせる。

ショコラは、自らの死を望んだのだ。


『この体は、元に戻りそうもない。 このままじゃまた暴走して、ミウを傷つけてしまう。 そうなる前に早くこの体を‥‥‥』

「馬鹿を言うな! そんなこと、出来るわけないだろ!?」

『お願い! あなたにしか頼めない! ミウの友達の、あなたにしか!』

「でも‥‥‥そんな‥‥‥」


翔はできない。

ショコラにトドメを刺すと言う決意を、最初はしていたはずなのに。


『私はミウに幸せになって欲しい。 それを邪魔するものは全て排除する。 例えそれが、自分自身であったとしても』

「ショコラ‥‥‥」


翔は今一度思う。

ショコラは、なんでここまで自分に似ているのだろうかと。

翔も同じ想いがある。

大切な友人や義妹には幸せになって欲しい、それを邪魔するものは全て排除する。自分であってもだ。

翔も同じで、その想いを変えたことはない。

ショコラは、本当に自分に似ている。

似た者同士だ。

‥‥‥似た者同士だからこそ、この場でトドメを刺す権利があるのだろうか?

暴走した魔法がどうなるか、翔は経験している。

だからこそ、今ここでトドメを刺すことの意味を理解している。

ショコラを倒さなければ、他の誰かが傷つく。

今ここでトドメを刺さなければ、誰かが傷つく。

それは絶対に嫌だった。

――――――だからショコラを斬るのは当然、仕方のないことだ。

‥‥‥違う。


「‥‥‥ふざけるな。 ふざけるな!!」

『ッ!?』


翔は全身の魔力を両手に収束させる。

自分の持つ、最大量の魔力を‥‥‥限界まで。


「誰かのために何かを犠牲にする。 それは仕方のないことなのかもしれない。 だけどな、仕方ないことを仕方なしと出来るわけないだろ!! 突きつけられた事実に対して分かりました、なんて言えるわけないだろ!! 俺は絶対に認めない!! 最後まで、最後まで足掻いて足掻いて足掻いて!! 奇跡なんてものを起こすに決まってるだろ!!!!」


翔は脳に溢れる膨大な|魔法文字(ルーン)を複雑に、何度も何度も組み合わせる。

組み合わせたものを、更に組み合わせたものと組み合わせて複雑に、更に複雑に変化させる。

そして生み出されるのは、誰も成し得ない奇跡の魔法。

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