第二章 迷い猫の絆編
第二話 迷い猫の痛み
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ミどころ満載な光景だが、黒猫は難なく最上階の五階にあるとある病室の空いている窓の中に入っていった。
「‥‥‥あそこに主が?」
そう考えるべきだろうと思った翔は、灯火病院の中に入る。
意外にも電気がついており、女性の看護師の人が受付を行っていた。
「あの、こんな時間で悪いんですけど‥‥‥」
翔はそれっぽい嘘をとりあえず話し、この時間にこの病院に来た理由を話す。
交渉にはそれほど時間がかからず、『この町じゃ若い子がよく喧嘩して運ばれてくるから君のような子は珍しくないわ』と笑ってそう言った。
翔は苦笑いしながらも、許可がもらえたことに感謝すると、奥にあるエレベーターを使って五階に上がった。
***
翔はエレベーターの中で、魔法使いとしての力を発動させていた。
それは、魔法使いが感じるセンサーのようなものだ。
近くに魔力反応があれば、それを感知して位置を特定すると言う、極めて便利な能力だ。
ただし、本人の魔力量で範囲は変動する。
だが、相良翔の魔力量は平均のそれを超えており、その範囲で病院全体の中にある魔力反応を特定するのは簡単だった。
「‥‥‥あっちか」
エレベーターから降りた翔は、左右に長く伸びた廊下に出ると、右から魔力反応を感じて右に進んだ。
しばらく歩くと、行き止まりについた。
その左にある扉。
‥‥‥507号室。
ここから感じる、魔力反応。
恐らくここに黒猫の主がいる。
そう思った翔は、縦に伸びる手すりのようなドアノブを右手で握り、右にスライドさせて開ける。
「――――――ッ」
開けた瞬間の光景に、翔は言葉を失った。
ふわっと、柔らかく甘い香りが鼻をくすぐる。
空いた窓から吹く風が香りを乗せてきたのだろう。
病室のベッドは最新式の介護ベッドで、所々機械的なパーツが見える。
白く、汚れのないベッドに上半身だけを起こした上体で窓の方を向いた少女。
その少女に翔は、“ある人物”の面影を重ねていた。
あまりにもそっくりなその姿に、翔は言葉を失ったのだ。
「‥‥‥だ‥‥‥れ?」
翔の存在に気づいた少女は翔の方を向く。
その顔も、あまりにも似ていた。
翔の知る‥‥‥とても、とても大切な存在――――――『義妹』に。
「‥‥‥あ、えと」
我を取り戻した翔は、少女の質問に少し言葉を詰まらせてしまった。
なんといえばいいのだろうかと、言葉が見つからないのだ。
それを察してかないのか、少女は自己紹介をした。
「私、『|小鳥遊 |
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