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箱舟
第七章
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第七章

「我は去る。よいな」
「わかりました。それでは」
「上から。存分に見せてもらおう。御前の罪の償いをな」
 これで神は消えた。後に残るのはノアとその妻だけである。二人は神の声が聞こえなくなると顔を見合わせて。そのうえで二人だけで話をはじめるのだった。
「聞いたな」
「ええ」
 まずは確認からはじまった。
「聞いたわ。あなたも同じなのね」
「御前も同じなのだな」
「そうよ。皆を導く」
「そうだ」
 確かに聞いたのだった。このことを。
「洪水の後な。それがわし等の罰だ」
「できるわよね」
「できる。いや」
 ここでノアは。その言葉を変えたのだった。
「やらなければならない」
「やらなければならない?」
「そうだ。何があってもやらなければならない」
 ノアはここでも強い言葉を出すのだった。それは己に言い聞かせているかのような強い言葉だった。そして妻にもこの言葉は心に響いていた。
「皆の為にな」
「皆の為。そうね」
「そうだ。わし等が皆を導かなければどうする」
 強い責任感に満ちた言葉だった。これは皆を乗せる舟にしようと決意した時と同じだった。その決意を再び誓ったのである。彼は今ここで。
「誰もいない。違うか」
「いえ、そうね」
 そして妻もその強さを受けて応えて頷くのだった。
「その通りよ。だからこそ」
「やるぞ」
 妻に対して告げた。
「何があろうともな」
「何があろうともなのね」
「そうだ。絶対にだ」
 またしても強い言葉だった。
「やり遂げる。いいな」
「ええ、じゃあ私もまた」
「そうだ。二人でだ」
 ノアの次の言葉はこれだった。あくまで己の妻を信頼して。この言葉を口にしたのだった。二人は最早二人で一人であった。そこまで絆を深いものにさせていたのだ。
「やるぞ。いいな」
「ええ」
 その言葉に頷き合い誓い合う。その時だった。
「ノアさん」
「雨が止んだぞ」
 部屋に人々が入って来た。そうしてノアに雨が止んだことを伝えるのだった。
「雨が止んだのですか」
「ああ、そうだ」
「それでどうするのだ?」
「はい、それでは」
 ここでノアの脳裏にあることが閃いた。そのことをそのまま語るのだった。
「鳩を呼んで下さい」
「鳩をですか」
「そうです」
 鳩を呼ぶと言った。これがどうしてなのかわかる者はいなかった。しかしノアはわかっていた。そして舟の甲板に出るとまず一羽の鳩を放した。それから言った。
「まずは外を見てくれ」
「外を?」
「どういうことですか」
 ノアを認める人々はまだわからない。それでノアに対して問うのであった。
「鳩を飛ばしたのはどうして」
「何かあるのですか」
「はい、あります」
 はっきりとした声でその人々に対して答えた
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