第七章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第七章
「我は去る。よいな」
「わかりました。それでは」
「上から。存分に見せてもらおう。御前の罪の償いをな」
これで神は消えた。後に残るのはノアとその妻だけである。二人は神の声が聞こえなくなると顔を見合わせて。そのうえで二人だけで話をはじめるのだった。
「聞いたな」
「ええ」
まずは確認からはじまった。
「聞いたわ。あなたも同じなのね」
「御前も同じなのだな」
「そうよ。皆を導く」
「そうだ」
確かに聞いたのだった。このことを。
「洪水の後な。それがわし等の罰だ」
「できるわよね」
「できる。いや」
ここでノアは。その言葉を変えたのだった。
「やらなければならない」
「やらなければならない?」
「そうだ。何があってもやらなければならない」
ノアはここでも強い言葉を出すのだった。それは己に言い聞かせているかのような強い言葉だった。そして妻にもこの言葉は心に響いていた。
「皆の為にな」
「皆の為。そうね」
「そうだ。わし等が皆を導かなければどうする」
強い責任感に満ちた言葉だった。これは皆を乗せる舟にしようと決意した時と同じだった。その決意を再び誓ったのである。彼は今ここで。
「誰もいない。違うか」
「いえ、そうね」
そして妻もその強さを受けて応えて頷くのだった。
「その通りよ。だからこそ」
「やるぞ」
妻に対して告げた。
「何があろうともな」
「何があろうともなのね」
「そうだ。絶対にだ」
またしても強い言葉だった。
「やり遂げる。いいな」
「ええ、じゃあ私もまた」
「そうだ。二人でだ」
ノアの次の言葉はこれだった。あくまで己の妻を信頼して。この言葉を口にしたのだった。二人は最早二人で一人であった。そこまで絆を深いものにさせていたのだ。
「やるぞ。いいな」
「ええ」
その言葉に頷き合い誓い合う。その時だった。
「ノアさん」
「雨が止んだぞ」
部屋に人々が入って来た。そうしてノアに雨が止んだことを伝えるのだった。
「雨が止んだのですか」
「ああ、そうだ」
「それでどうするのだ?」
「はい、それでは」
ここでノアの脳裏にあることが閃いた。そのことをそのまま語るのだった。
「鳩を呼んで下さい」
「鳩をですか」
「そうです」
鳩を呼ぶと言った。これがどうしてなのかわかる者はいなかった。しかしノアはわかっていた。そして舟の甲板に出るとまず一羽の鳩を放した。それから言った。
「まずは外を見てくれ」
「外を?」
「どういうことですか」
ノアを認める人々はまだわからない。それでノアに対して問うのであった。
「鳩を飛ばしたのはどうして」
「何かあるのですか」
「はい、あります」
はっきりとした声でその人々に対して答えた
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ