七十四 三竦み
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したように瞳を閉ざす。
否、彼の双眸は始めから閉じたままだった。
「……最初の質問に答えよう」
ナルトが求める返答を的確に判断する。質問を彼がわざわざ言い直した訳をイタチは心得ていた。
ナルトは無駄な事を口にはしない。
「今は俺達がいる湖から周囲の木々…くらいか。ゼツはいないようだ。君のおかげだな」
「イタチ」
名を呼ばれる。催促され、イタチは誤魔化すのを諦めた。肩を竦める。
「俺の…口寄せ動物の目が届く範囲だ」
正直に答え、イタチはくいっと顎を軽く動かした。その所作一つでイタチが示した対象を目に納めたナルトは「アイツか…」と小さく零す。
「木ノ葉を偵察させていた奴か?」
「ああ」
頷く主人に気づいたのか、大きく羽ばたく。漆黒の翼をはためかせ、それはイタチの肩に乗った。艶やかな濡れ羽色の羽根が一枚、湖へ墜ちゆく。
ナルトの最初の質問――「どこまで見えている?」は範囲を聞いていたのである。
イタチの眼を持つ鴉が何処から何処までを見る事が可能なのか。そして鴉と視神経が繋がっているイタチが何処まで周りの情景を把握出来ているのか。
「瞼の裏に映像が映るような感覚かな。そこまで不便ではないよ」
「だが『写輪眼』は使えないのだろう?」
罰が悪そうに顔を背けたイタチにナルトは容赦なく「洗いざらい話せ」と厳しい言葉を浴びせる。
「鬼鮫との戦闘中も瞳術は一切使わなかった………使わなかったのではなく、使えなかったんだろう?」
「……………」
「何故ならイタチ。お前の眼は両方とも…――」
漆黒の羽根が水上を漂う。
大小の波紋を生み、たゆたうそれをナルトは拾い上げた。指先でくるりと回す。
応じるように、渦巻く朱を瞳に宿した鴉がカァと小さく鳴いた。
「――――その鴉に埋め込まれているのだから」
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