第四章
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第四章
「舟を完成させましょう」
「皆が乗るこの舟をだな」
「ええ、この舟を」
「完成させよう」
「何があっても」
深く、心から誓い合うのだった。そして遂に舟が完成した。誰もが舟の周りにいた。ノアを慕ってあらゆる人と動物達がやって来て力を尽くした証である。
「できたぞ」
「遂にだな」
「ああ、できたんだ」
「やっと。舟が」
人々は口々に言い合う。見れば途方もなく巨大な舟がその姿を見せている。ノアだけでなく多くの者がその舟を見て満面に笑みを浮かべていた。
「完成したんだな。長かったな」
「ノアさん」
ノアを手伝った壮年の男の一人がここでノアに声をかけてきた。
「はい?」
「有り難う」
何故か彼はノアに礼を述べてきたのだった。これにはノアも目を丸くさせた。
「有り難う!?」
「そう、いい仕事をさせてもらったよ」
「ああ、そうだよな」
「全くだ」
そして他の者達もまた彼の言葉に応えて頷くのだった。人だけでなく動物達もそれに続いて口でいななきをあげている。賛同しているということだった。
「あんたのおかげだよ、本当に」
「楽しませてもらったよ」
「楽しませてもらってとは」
これまたノアにはわからない言葉だった。やはり目を丸くさせたままになっていた。
「一体全体どうして」
「だから。あんたこの舟を完成させたかったんだろう?」
「だから健っていたんじゃないのか?」
「それはそうですけれど」
「だからだよ」
「それだからなんだよ」
皆ノアの今の言葉に応えてまた述べてみせたのだった。
「だから手伝わせてもらったんだ」
「他ならないあんたの為にな」
「わしの為に」
何度も言われてきたがここでも言われ。ノアの心に何かが宿った。
「それで有り難うとは」
「いい仕事をさせてもらったよ。だからなんだ」
「あんた、この舟で何かをするつもりだよな」
「ええ、まあ」
実は理由はまだ言っていない。皆それを聞くことなく彼に力を貸してくれていたのだ。これこそが彼の決意を確かなものにさせるものであったのだが。
「その通りですが」
「その何かをする為に働かせてもらったことが有り難いんだよ」
「俺達は」
「そうだったんですか」
そういうことだった。ノアはここでようやく彼等の心を全て理解したのであった。理解するとノア自身の心が実に温かいものになるのであった。
「それで」
「そういうことさ」
「じゃあこの舟でそれをしてくれよ」
笑顔でノアに告げてきたのだった。
「あんたがしたいことをな」
「何があっても」
「ねえあなた」
ここでこれまで沈黙を守って彼の横に立っていた妻が。そっと彼に囁いてきた。
「もう。行ったらどうかしら」
「どうしてこの舟を建ったかをか」
「そう
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