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業は消えて
第一章
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れは離婚届だった。それを置いてということの意味するものは一つであった。
「長い間好き勝手やって顧み見なかった奴だがな」
「御子息も娘さん達も」
「もう誰も残っていないのだな」
「皆さんおやっさんの仕事を嫌っていましたから」
 その手段を選ばないやり方は子供達からも嫌われていたのだ。元々ヤクザという仕事そのものが彼等に嫌われていたのである。
「ですから」
「そうか。誰もか」
 彼はそれを聞いてあらためて思うのだった。
「いなくなったんだな」
「組はもうありません」
 このことも告げられた。
「全部若頭なりが独立して持って行きました」
「残ったのは何もないか」
 彼は言った。
「何一つとしてか」
「金位はありますが」
 男が言ってきた。
「あとこの屋敷も」
「残ったのはその二つだけか」
 言葉は何故か澄んでいた。周りには誰もおらずがらんとしたものだった。残っているのは彼と僅かな者達だけなのであった。
「そうか」
「どうします?これから」
「御前達も他の場所に行け」
 彼は告げた。
「いいな。他の場所にだ」
「他のといいますと」
「金はやる。他の場所で生きるんだな」
「じゃあおやっさんは」
「俺のことは気にするな」
 彼はこうも言うのだった。

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