第一章
[2/2]
[9]前 最初 [2]次話
れは離婚届だった。それを置いてということの意味するものは一つであった。
「長い間好き勝手やって顧み見なかった奴だがな」
「御子息も娘さん達も」
「もう誰も残っていないのだな」
「皆さんおやっさんの仕事を嫌っていましたから」
その手段を選ばないやり方は子供達からも嫌われていたのだ。元々ヤクザという仕事そのものが彼等に嫌われていたのである。
「ですから」
「そうか。誰もか」
彼はそれを聞いてあらためて思うのだった。
「いなくなったんだな」
「組はもうありません」
このことも告げられた。
「全部若頭なりが独立して持って行きました」
「残ったのは何もないか」
彼は言った。
「何一つとしてか」
「金位はありますが」
男が言ってきた。
「あとこの屋敷も」
「残ったのはその二つだけか」
言葉は何故か澄んでいた。周りには誰もおらずがらんとしたものだった。残っているのは彼と僅かな者達だけなのであった。
「そうか」
「どうします?これから」
「御前達も他の場所に行け」
彼は告げた。
「いいな。他の場所にだ」
「他のといいますと」
「金はやる。他の場所で生きるんだな」
「じゃあおやっさんは」
「俺のことは気にするな」
彼はこうも言うのだった。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ