第一物語・後半-日来独立編-
第七十四章 終息へ向かう時《2》
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「外部には傷らしい傷は見られないが」
「骨が内蔵を貫いている可能性がある。手術の必要があるかもしれない」
とっさに繁真が事前に得た情報を伝えた。
急速に命の危険が迫っているわけではないが、何もしないままでは出血が影響して死に至る。
セーランは憂いの葬爪を清継へと近付けさせ、ふう、と呼吸を整えて想像する。
折れた骨が元の形、位置へと戻るのを。
裂かれた臓器が流魔によって回復していく様子を。
淡く光り出す憂いの葬爪。
間近で見る宿り主の力を記憶に焼き付けるかのように、黄森の学勢はじっとセーランを見詰めていた。
黙っていても仕方無いので、先程の続きを口にするセーラン。
「神州瑞穂から日来が無くなるわけじゃねえ。ただ神州瑞穂っつう国から離れるだけさ」
「手を取り合っていないだけで国は崩壊進行について研究している。今更、日来が乗り込んでも仕方無いとは思うが」
清継の様子を見つつ、央信は一度閉じた口を開いた。
特別日来が崩壊進行を危険視しているわけではない。同じく世界の国々も崩壊進行の危険性は理解しており、ただそうであっても手を取り合おうとしないだけだ。
厳密に言うと、手を取り合う必要性が無い。
「崩壊進行の原因はいまだ詳しく分かってはいないのは知っているな? 黄金時代に起きた大戦が終わったとは言え、大戦で負った傷跡は今日まで全く癒えてはいない。
そのなかで崩壊進行を糧に世界をマシにするなど無理な話しだ」
「やってみねえと分かんねえよ、んなもんは」
「やらなくとも考えた時点で分かる。世界はそう単純には出来てはいない」
「複雑に絡まった糸でも時間を掛ければ解くことが出来る」
「どれ程の時間を要するか検討が付いて言っているのか。何時、創生区域が崩壊するか分からないのに」
「動かねえと手遅れになる気がするんだよ。気付いた頃には手遅れでした、はい終わり、なんて御免だからさ。やっとけることは早くやっておきてえ」
央信は深くため息を付きながら、首を横に振った。
脚の震えが収まりつつあることから、なんとか歩くことが可能になったため、何を思ったのか央信は皆から一定の距離置いた位置へと移動した。
離れた央信に反応するようにして、清継の口から言葉が漏れた。
「不覚ですね……貴方に、治療されるなんて……」
「プライドが高いことで。てか痛みは平気なのか? 一応は痛覚伝わらないようにしてんだが」
痛覚も流魔によるものなので、憂いの葬爪を持ってすれば痛覚を遮断するのか容易なことだ。
しかしながら、あたり経っていないのに回復の速度がやけに早い。
元々回復能力が高いのかもしれないが、ふと流魔を通して伝わる違和感。
まるで霧に隠された秘境。
分かりそうで分からない、誰も近付けさせないように何かを隠し
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