SAO編
日常に変わった非日常
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人は慣れるものだとはよく言ったもので、デスゲームと化していたこのSAOの世界にも二層を攻略したあたりから多くの人たちが順応し始めた。それからというもの、死者の数はぐんと減り迷宮区の攻略も順調に進んでいった。そして現在七十四層。その迷宮区に長時間籠りっぱなしの俺は時間も忘れて何度目かのエンカウントである《リザードマンロード》との戦闘を続けていた。
鋭い咆哮が響き渡ると、ぬらりと粘着質に光を反射する鱗に覆われた腕が右手のシミタ―を構えて突っ込んでくる。ひゅん、と風をきる音に円弧を描いた得物の軌跡に俺は動かない。そう距離が開いていないにも関わらず、相対するリザードマンロードが選んだのは曲刀カテゴリに属する突進剣技である《フェル・クレセント》だったのだ。予想外の攻撃にわずかに硬直した俺に肉迫するオレンジ色のライトエフェクト。勝利を確信したような笑みがリザードマンロードのトカゲのように大きく裂けたその口に浮かぶ。
「ふっ……!」
咄嗟に前方へ足を踏み出した。転倒する手前ギリギリまで重心を前に倒す。掠ったシミターが耳元をかすめて、感じた剣圧に背筋が凍る。恐怖を拭うように狙いを定めた視線の先。ソードスキルを発動したことによる硬直時間に入ったリザードマンロードが驚いたように目を見開いた気さえする。それに今度は俺が口の端を持ち上げた。瞬間、剣先がライトグリーンの光を纏う。ぐん、と途端に体が速度を増して駆け出した。短剣スキルの中級突進技《ラピッドバイト》。けれどそれは上位モンスターであるリザードマンロードにとっては直撃したところで大したダメージを与えることはできないはずである。……通常ならば。
「ぐ、があああっ!」
筋力補正と武器の付帯効果で残り数ドットのHPをさらに削り取られたリザードマンロードだったが、一ドットの幅でわずかに持ちこたえる。スキル発動後の硬直時間に入った俺の背中に、牙を光らせたリザードマンロードが容赦なくシミタ―がを振り上げる。けれどその刃は俺に届く寸前にぴたりと止まり、悶絶の咆哮が響いた。
「終わりだな」
硬直が解けた俺は、自らの得物――短剣《ブラッドリーパー》を腰の後ろに付けられた鞘に戻す。真紅の刃は吸い込まれるように黒のそれに姿を消した。最後の咆哮と共に残ったHPも削り取られたリザードマンロードはすこしの硬直の後でその姿をポリゴン片に変え、床に残っていた緑色の血痕もそれと同時に沈むように消えていく。
「ふわぁ……ねみぃ」
極限まで張りつめさせていた神経を緩めると、途端に眠気が襲ってきた。そういえばかれこれ一日半くらいは籠っていただろうか。夢中になると時間を忘れる性質なので、こういうことが無いように一応アラームはかけておいたのだが無駄だったようだ。
「んぁ……むり……」
安全エ
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