第35話「ガンツと俺」
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ないはずの傷痕を、今まで普通に生きてきた彼女が受け入れ、包み込み、それどころか一人の知人として、生徒として、友人として支えようとしている。
例えば自分が碌に戦いを知らず彼の傷を見たとして、これほどに真っ直ぐな思いを抱くことが出来るだろうか。
――出来ない。
自分が彼の裸を見てしまったとき、隣で一緒に見ていたアスナの様子を思い出す。
彼女は顔を青くさせ、悲鳴を上げようとしていた。
――おそらく、自分も。
そうなっていただろう。
ただアスナに関してはああ見えて懐が深いらしく、すぐに馴染んでいたが、自分ならばそうはいかないだろうという思いが刹那にはあった。そのまま彼から遠ざかっていた気がする。
もちろんこれは意味のない仮定なので考えるだけ無駄だが。
――なんと大きく、なんと広いのだろう。
木乃香を見る刹那の目にはただ畏敬の念が。
「……せっちゃん?」
なかなか答えようとしない刹那に、木乃香は少し不安そうに尋ねる。その様子すら、まるで微笑ましい。
「いえ、そのとおりです。木乃香お嬢様」
「うん」
この場にそぐわないほどの穏やかな空気が流れていた。と、「にしても」見事に空気を真っ二つにする声が響いた。
「この殺傷力……タケルの旦那、さっきまで全然本気じゃなかったてことだな」
今までずっと黙り込んでいたカモがまるで信じられないように「うーん」と唸る。
「……はぁ」
空気がぶち壊されたことがシャクだったらしく、あからさまなため息を吐きつつも刹那はそれに答える。
「ええ、タケル先生が本気で私達と戦っていたなら既にここも惨状です」
「じゃあ、旦那は手加減しながらネギのアニキの一行を無力化したっていうのかい?」
――嘘だろ?
呟くカモに、刹那は無言で頷き肯定する……もっとも刹那や楓も本気ではなかったのだが、なんとなくそこは沈黙しておく。
「はは」
カモの乾いた笑いが響く中「!?」刹那が反応した。
「どうかしたかい、あねさ――」
「――シッ」
カモの声を遮り、符からも手を離す。既に魔力を得ている符は刹那の手を離れても木乃香たちにタケルの視界を与え続けるので気にする必要はない。
それよりも問題が差し迫っていた。
――来る。
周囲に目を走らせるが、そんな様子は一切ない。だが、魔を感知する結界と、研ぎ澄まされた刹那自身の感覚が油断を許さなかった。
愛刀『夕凪』を鞘から抜き放ち、数歩歩いて身構える。
「……」
重苦しい沈黙が流れ
「神鳴流奥義」
刹那が小さく呟いた。そして――
彼女達が位置する飛行船の上、5M。上空から雲を突き破り、
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