第35話「ガンツと俺」
[7/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ーンを見せようと思うはずもない。
「お、お嬢様?」
心配になって声をかける刹那に、木乃香は気丈に答える。
「ううん、大丈夫。ありがとう、せっちゃん」
「い、いえ。ですが……――」
――真っ青ですよ?
という言葉を遮り、彼女は気丈な顔を作った。
「この間、皆でいいんちょーの島に行ったことあったやろ?」
「……はい?」
突然の関係のない話に、刹那が間抜けな声をだした。
「そんでタケル先輩はそん時に皆と海に入らんかったん覚えてる?」
「え、ええ」
「そん時にウチ、タケル先輩の体を見たんよ」
「!?」
「凄い傷だらけで、なんでこんなことになったんやろって思った」
それは刹那も知っていた。修学旅行でアスナと風呂に入っていた時に偶然その傷を見たのだ。それをタイミングは違えど木乃香も見ていた。
「あ、あの……それは……その」
自分のことですらないのに必死にタケルのフォローに回ろうとしている刹那に、木乃香はクスと微笑んで、「やっぱり」と呟いた。
「せっちゃんも知ってたんやね?」
「……へ?」
「あんなにいつも普通やのに、本当はどれだけ苦労したんやろ? 本当はどんなこと考えてるんやろ? 何でウチラの先生になってくれたんやろ?」
ふつふつと。
木乃香は言う。
微笑みながらも、目は心配そうに。
語りながらも、口調は慈しむように。
「ネギ君も色々抱えてて皆に心配してもらってるけど、先輩は誰に心配してもらってるんやろ? 誰に悩みを打ち明けれるんやろ?」
ちらりと、気を失っている楓に目を配る。
その瞳には嬉しそうな色が混じり、それでいて悲しそう。
一陣の風が吹き、彼女の長い髪をかきあげた。まるでそうなることすらわかっていたかのように、一度空を見上げて視線を刹那に戻す。
「先輩は何にも言わんけど、やから。ウチらで先輩のこと少しでも理解できたら、先輩が少しでもホッとしてくれたら……だからその為にも先輩が何してるんか見届けんと――」
――そやろ、せっちゃん?
にっかりと微笑む。
「……」
声が出ない。
圧倒されていた。
タケルの体に残る傷は生易しいというレベルものではない。漫画やアニメでたまに見ることのある、見方によれば格好いいと思われるような、そんなモノではない。
傷跡はおびただしく幾重にも走り、体中を駆け巡っている。重なりすぎた傷は肉を抉り、盛り上げる。
修学旅行で刹那が見たときですらそんな有様だったのだ。南の島で木乃香が見た傷というのは、修学旅行の後。つまり、あのときに一度死に掛けていたタケルの傷痕は、さらに酷くなっていたことだろう。
最早グロテスクでしか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ