第35話「ガンツと俺」
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「そういえば、あの時からだったか?」
――……少しずつ俺が壊れ始めたのは。
おびただしく流れたオイルのような血の上に立ち、タケルは動きを停止した。
ここは戦場で、少しでも地面に目を配れば、そこは正に死屍累々。
既に248体もの星人を撃破したタケルはすぐさまコントローラーに目を配っていた。
――どうやら、残りの雑魚は桜咲さんの方に向かったようだな。
「……」
僅かな沈黙。
援護に向かうかどうか……は考えない。考えてはいけない。
ミッション前までは確かにあった『他人を心配する』という人間性は既にタケルの中にはない。
例え、どれほど日常に生きがいを見出そうが、彼は彼。
長い年月をかけて生み出された『殺し合いの戦場でこそ生きがい見出せる』という―その異常性は決して変わるものではない。
格闘家でいう条件反射とでも考えればいいのかもしれない。
格闘家は急に迫ってきた拳を防ぐ、避ける、あるいはカウンターをするといった行動が自然と出てしまう。
タケルの場合はガンツのミッションが始まればただ殺すこと、命のやりとりをすることにのみ心が傾く。ミッション外の全ての懸念を無視し、頭から消去する。
結果、ミッション中の彼は人を心配するということなど、ありえない……例外の存在もいたが、それは別として。
だからタケルが援護に向かうためだけに動くことは無い。
だから、タケルは動かない。
いや、だがもう一つ。タケルが動こうとしない理由があった。そもそもコントローラーに記されている敵が刹那の側にしかいないのなら心配云々の前にそちらに向かっていた。
動かなかったもう一つの理由。それは――
「……!!」
大きなソレに気付き、見上げる。
「……なるほど、これがボスか」
――最後の星人がそこにいたから。
時は少し戻り、上空に位置する飛行船。
「な、なに? ……これ」
符から伝わるタケルの視覚情報に、木乃香は顔を蒼白に染め上げ、唇を震わせながら言葉を漏らしていた。
今、彼女達に伝わる視覚情報は、タケルのソレそのもの。
つまり、目の前では血の池が広がり、血の雨が降り注いでいるのだ。今まで普通の学生をしていた木乃香に耐性があるはずもないのは当然だろう。
――しまった。
既に結界を張り終え、同じくタケルの視界を得ていた刹那が悔やむような表情を見せた。
以前、刹那が見たような化け物のときは一切の血を流さなかった。だから今回もそれほどまでの惨状にはならないだろうと甘く見ていたのだ。
というかそうでもなければ、彼女の大切な木乃香お嬢様にこんなグロテスクなシ
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