第35話「ガンツと俺」
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囲を既に囲まれていたのだ。
もう駄目だと諦めた仲間達をタケルが不器用な言葉で鼓舞し、それでもまた一人死んで。その時には生き残っていた人間全員のガンツスーツは既に効果を失っていた。
絶望的空気が流れる中ただ一人、タケルだけが諦めなかった。
繰り返される一定の呼吸。落ち着いていく心。それと共に消えていく死への恐怖。より鮮明になる思考。どこかで高揚する自身の想い。
あらゆる世界が反転し、いつの間にか笑みを。そして、タケルがその頭角を現した。
敵の戦力、弱点、攻撃能力、範囲。今までに見たありとある情報全てを冷静にはじき出し、ゆらりと動く。
仲間を逃がすために、囮となったタケルへ敵による一斉攻撃が飛び交った。その隙間も無いほどの雨のような攻撃をたったの2歩――
そう、たったの2歩ずれただけだった。
それはまるで最初から決まっていたかのように外れ、片腕のみを奪うだけに留った。そして、次の瞬間にはタケルはガンツソードを振りぬき、15体を一気に両断。
残る星人の数は約50。
結果、彼は下半身と右腕を失いつつも、ガンツによるギリギリの転送によって帰還。逃がした仲間も無事に生き延びていた。
たたき出した点数は203点。一人で実に半分近くの敵を撃破したことになる。今までの点数とあわせて計262点にまでなっていた。
生き延びた仲間に声をかけようとして、彼等はタケルから後ずさる。
彼等に浮かぶ表情は今までのものとは全く違っていた。
首を傾げるタケルに、彼等は言う。
「助けてくれたのは礼を言う、でも……途中からはお前――」
なぜか楽しそうなタケルに、彼等は言うのだ。
「――お前が恐かった……人間じゃねえよ」
そう、彼等は言った。
「「悪魔」」
彼等はタケルの戦いぶりを見ていた。
腕をもがれても痛がることなく敵を撃つ。足を食われても迷うことなくそいつを斬る。腸を抉り出されても怯えることなく、むしろ笑いながら標的を潰す。下半身を溶かされても慌てることなくトドメをさす。
ソンナただ異常な光景。蹂躙される側が交代してしまったかのような圧倒的な狩り。
そんな人間離れした戦いを見せられれば誰もが恐れるだろう。
それを見てしまえば誰もが呟いてしまうだろう。
けれど、いや……だから。
このとき、タケルが見せたのは孤独への悲しみでも裏切られたことへの怒りでもない。
ただ淡々と、無感動に。
その言葉を受け止め、元仲間はタケルに背を向け、タケルは元仲間へと背を向けた。
ガンツに駆りだされるハンターが一人『悪魔』の産声を上げた瞬間だった。
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