Mission・In・賽の河原 中編
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を前に必死の形相で喚いているというよくわからない光景にしか見えない。だが、鬼はこの状況が本気でシャレにならない。
子供たちを無視して無理やり石を崩せば当然その手は精細さを欠き、供養の塔が崩れてしまうだろう。そうなれば今までの努力が全て水の泡になり、向こう数百年タダ働きの日々が待っている。
かといってこれを見逃せば上司である閻魔から、死んだ方がマシなほどの罰が下るだろう。罪の重さがどうであろうと、閻魔が下す時点で恐ろしい激痛を伴うことは決定されたようなものだ。一番マシと言われている舌の引き抜きなど、無限にも感じられる激痛を与えるための「工夫」がある拷問なのだから、絶対に受けたくない。どんな工夫かなど、口にも出したくなかった。
そして現在子供たちがとっている円陣。これが本当に拙い。ただ単に円陣を組んで積石をしているだけならば、その隙間に手を突っ込んで石を崩してしまえば事足りる。その隙間を埋める何かがあっても、閻魔の部下として作業効率を上げるために与えられた「法力」を使えば崩すのは容易い。
法力にはいろいろと種類があるが、下級の鬼が使えるのは念力の真似事程度だ。それでも確かに仕事には便利で、書類仕事や子供の浅知恵を崩すには便利なものだ。悪事に使えば頭が割れんばかりの頭痛が走るため悪用できないのだが、決まり事を破らなければ便利な力なのだ。
が、下級の鬼では本当に念力の真似事が精々。精密作業など出来はせず、大雑把な操作しかできないという欠点がある。つまり、いま塔に隣接した積石を法力で崩そうとすれば、塔もろとも崩れ去ってしまうのだ。
(くそっ!くそくそくそくそぉッ!!なんて餓鬼だ!もしもお前らが足を滑らせて積石に当たったら、お前ら散々苦しむことになるんだぞ!?積み上げるのに失敗していれば俺が崩すまでも無く全員責め苦に遭うんだぞ!?最近の餓鬼は正気かよ!?)
怖いもの知らずの捨身の作戦だ。その恐ろしいまでの怖いもの知らずに戦慄を覚えて、鬼は生唾を飲み込んだ。
鬼は実際に塔を崩してしまい苦しんだ子供を見たことがある。体は震えて顔面蒼白、堅い石の床を塒に身を横たえ、恐ろしいまでの悪寒と頭痛に苛まれて呻き苦しむ子供。あまりの苦しみに奇声を上げたり、辛さのあまり爪で自分の体を掻き毟ってまでして苦しみを紛らわそうともがいていた。鬼である自分でさえ思わず同情したくなるその苦しみを、この中の全員ではないにしろ目の当たりにしている餓鬼が円陣の中にいる筈である。
つまり、無知ゆえの強気でも無謀でもない。こいつらは決死隊だ。死んだ方がマシなほどの苦しみを味わうリスクがあっても、それを覚悟で乗り越えた存在。あの大量の積石も、態々危険すぎる供養の塔に隣接させて積石を積み上げたのも、その周囲でかごめかごめを歌うのも、すべてそうまでしてでも塔を
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